home >  弓道四方山話 > 巻の八 「石火の巻」

8-2 十文字離れと十字架離れ

射法の基本が三重十文字、五重十文字にあり、離れもまた十文字の大離れが良いことは異論が無いでしょう。しかし、十字架のような一直線の離れは良いとは云えません。

十字架離れと云うのは私が勝手に付けた名前ですが、肘を固定して肘の関節をコンパスの支点にして開く離れです。この離れは肘が止まっており、離れの瞬間には勝手は矢筋に対してほぼ直角の上方向に回転しますので、ゆるみ離れになっているのに、気がつかない点が問題です。

十文字の離れは会で五重十文字を効かせると、両手、両肩、胸筋の五箇所の詰め(五部の詰め)となり、伸びあいによって胸筋で割れるように火打石を打ってパンと火花が飛ぶように離れを出すと、両手、両肩の四箇所が同時に離れる四部の離れ(最高の離れ)となります。この離れは両肩が支点となって回転するので、肘は肩から後ろに開き「くの字」の形になりますが、伸びがあれば、勝手の手先は伸びて、やや「くの字」ながら大きく伸びて大離れとなります。八節図解の離れの形がこれです。この十文字の離れでは肘の関節は「くの字」が伸縮しますが、押手と勝手は矢筋方向に一直線に伸びてゆきます。十字架離れは大きく離そうとする意識から、かえって両手先だけ(2箇所)で離しているのです。

このような離れを矯正するには、紐を使った練習方法があります。ゴムひも、あるいは切れ弦を左右に引っ張ったまま、他人にはさみで切ってもらいますと、自然な離れが出やすいと思います。慣れたら次には、紐をひぱったまま、はさみでなく指先で軽く離してみます。これで自然な離れが出せると思います。これらはイメージを自分で持つことが肝心と思います。

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