home >  弓道四方山話 > 巻の六 「掛け橋の巻」

6-2 烏兎の懸け橋

目中てに用いる烏兎の懸け橋と云う心は、烏はからす、兎はうさぎなり。弓手をからす、妻手をうさぎと云い、矢を懸け橋と名づけ、左右真っ直ぐなるを懸け合いと云いしなり。

「打ち渡す烏兎の懸け橋直ぐなれば、引き渡すには反り橋ぞ良き」

「弓に二度の反り橋と云う、直の反り橋はこれなり。」

二度の反り橋と云うは、引き渡すときは反り橋の形のように丸く引き分けるのを良しとし、これを引き渡す反り橋と云う。また、引き納めて後ろのかりかね骨(肩甲骨のことか)のゆき合いて前の胸の高きを良しとするなり。これを引き納めて胸の高き反り橋と云い、二度の反り橋なり。

弓手はからすのような形に、妻手は兎のような形にし、日月の釣り合いで真っ直ぐに水平に渡し、引き分けは中高に丸くアーチ状に、会では肩甲骨を合わせるようにし、胸を高くして反らすように大きく引き納めるのが、二度の反り橋です。

コメント


 くもり様、竹林流の「五巻の書」の五巻目「灌頂の巻」(秘伝)
 に出てきますね。矢筈をおけらの頭に例えるとは面白いですね。
櫻井孝 | 2019/01/30 20:29
そうですね!
けらくびとかもかわいい言いかただと思います。
くもり | 2019/01/29 16:06
 くもり様 コメントを有難うございます。

 手先に力が入ると、弓手は弓にシガミ付き、
 馬手は弦にカラミ(搦め)付き、
 しがらみに捉われて伸びがで難くなります。
 動物に例えると、気持ちも柔らかくなれ
 そうですね。
櫻井孝 | 2019/01/28 21:48
あらためて思うと形の上でも左手がハシボソに、右手がウサギに見えますね。

そう思うとなんだか自分の両手まで自然と歴史を倣っていたようでいとおしく思えてきます。

私は諸カケをつかっているのですが、妻手の丸すぎずずんぐりした形が、最近なにかに似てると思っていたんです。

ニホンノウサギだったんですね!

これからもいろいろ教えてください。
くもり | 2019/01/17 17:18
かなこ様 コメントを有難うございます。
貴方の云う通り、陰陽、天地を日月に譬え、太陽には烏、鵜(からす)、月には兎が住み、その使いとされてきました。日本の古典文学には一つの言葉に二通りの意味、解釈を持たせるのが高度な表現として用いられています。
 この烏兎という言葉も、象徴的なシンボルとともに、形にも表れています。弓手は弓に直角にして水平に押す形は、鳥の頭のように使いなさいという判り易い説明です。意識しないで弓手を構えるとき、下押しになりやすいので、あえて烏の首のように、あるいは鵜飼の鵜が水面に顔を出すときのように、水平に押しなさいというものです。
 また、馬手は親指を弦に直角を保ったまま、丸く兎のように柔らかく使いなさいという教えです。
 話は変わりますが、弓の上下の末はず(うらはず)と本はずについても烏の嘴、兎の額と云います。これは弦輪をかける部分ですが、うらはずは嘴のように長く尖っていますが、元はずは少し丸く短く兎の鼻から額のような形です。
 
櫻井孝 | 2016/12/24 21:36
初めまして
いろいろ勉強させて頂いております

一つわからないことがあります
それは
「弓手はからすのような形に、妻手は兎のような形にし、」
とありますが烏兎は日と月を言っていて、太陽にはヤタガラス、
月にはウサギと解釈しているのですが、形そのものの類似という
点では初耳なのですが
かなこ | 2016/12/23 09:39

この記事へのコメントはこちらのフォームから送信してください

小笠原流 流鏑馬

小笠原流 流鏑馬 | 小笠原流が各地の神社で奉仕する流鏑馬を網羅した写真集。各地それぞれの行事の特徴や装束が美しい写真で解説される。観覧者が通常見ることのない稽古の様子や小笠原流の歴史についても書かれており読み物としても興味深い。数百年の時を経て継承されてきた古流の現在を記録し後世に残すという意味で資料としての価値は高い。

小笠原流弓と礼のこころ

小笠原流弓と礼のこころ | 小笠原流宗家(弓馬術礼法小笠原教場三十一世小笠原清忠)著。一子相伝800年の小笠原流の歴史や稽古法などについては40年程前に先代宗家の著した書があるが、本書では加えて武家社会終焉以来の「家業を生業とせず」という家訓を守ること、そしてこの平成の世で礼法のみならず弓馬術の流儀を守ることへの矜恃が綴られる。

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本

弓の道 正法流入門―武道としての弓道技術教本 | のうあん先生こと正法流吉田能安先生の教えを門人達が記録した書籍。のうあん先生は古流出身ではないが、古流を深く研究した上で現代正面射法を極めた人といえる。射法についての解説はもちろんのこと、伝説の兜射貫きや裏芸といわれる管矢についての記述も読み応えがある。

記事カテゴリ
最近のコメント
著者プロフィール
過去の記事
others
東海弓道倶楽部