5-8 朝嵐の懸け
昨年の11月に長谷川弓具店に注文した懸け(弓懸け、弽、ユガケ)が、3月の始めにやっと出来上がってきました。新しい懸けの注文は、「手にぴったりであること、四つ懸けで、親指が短く、真っ直ぐで、懸口は親指の付け根から1cmくらい先の方にあり、溝を親指に直角につける」と言うものです。
今まで使っていた懸けは自分の手にぴったりであり、楽に引けるので何も不満はありませんでしたが、四方山話を書いているうちに、昔の懸けのように浅懸けの味を試してみたいと思うようになりました。
また、浅懸けには弦枕が爪先の関節にあるものを折り目、中間にあるのを朝嵐と呼ばれていますが、折り目では自信がないので、朝嵐の懸口にしました。
長谷川のおばあちゃんによれば、浅懸けはもっぱら三つ懸けに用いるべきものらしいですが、これまでの慣れから、四つ懸けに朝嵐の懸口として挑戦しようと思い立って注文したものです。
現代の懸けは、殆ど懸口の溝が親指の付根についており、深懸けと呼ばれ、力が楽ですが指の使い方が悪いと、引っかかりやすいのが難点だと思われます。
これに対して、懸口が指の中ほどにあるものは浅懸けと呼ばれ、指先でつまんだ感じとなりますが、慣れると弦の力の梃子作用により親指が起されるので、軽い離れが出しやすいと言われています。
しかし出来上がった懸けは、手にはぴったりで、親指も短くてまっすぐで、懸口も付け根から1cmにあり注文どおりですが、懸口の角度は十文字でなく、約30度くらいの角度があり大筋違となっていました。
そして使い心地といえば、現在のところ手首に非常に力が入ってしまい、鋭い離れには程遠く、矢にも勢いがありません。しかし、これは浅い懸口にまだ慣れていないだけなのか、角度が合わないためなのか、まだ判りません。もう少し使い込んでから、懸口の調整をしてみたいと思っています。
余談ですが、懸けを購入した時に長谷川弓具店が付けてくれた日本手ぬぐいには、「朝嵐 教えを受けて 射るならば 昼をば過ぎて 夕嵐なり」と書いてあり、これを読んだ時にかっと熱くなりました。
これは「初心者に朝嵐の鋭い離れの極意を教えても、簡単にできるものでなく、昼どころか、日が暮れて弛みきったような夕嵐の離れになってしまうよ」と言う意味です。
一寸恥ずかしいやら、悔しいやら、見透かされた感じがします。「松林に吹き抜ける朝嵐のような涼やかな凛とした離れがでるように追求したいと思います。
櫻井 孝 | 2001/09/03 月 00:00 | comments (0)
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