home >  弓道四方山話 > 巻の四 「父の巻」

4-25 押手の人差指の働き

押手手の内の整え方について弓道教本の図解には、「人差し指は曲げても伸ばしてもよいが指先を下に向けぬように」とあります。実際には人差し指を伸ばすもの、第2関節で緩く曲げるもの、あるいは第2、第3関節をしっかり曲げるものの3種類が用いられています。

私は中学1年生の時に弓を始めて以来、ずっと「第2、第3関節を鍵形に曲げる形」でやってきましたが、最近押し手の握り込みが硬すぎることに気が付き、平成17年の新年射会から「人差し指を伸ばす」手の内に変更しました。

人差し指を曲げて握ると握りこみが強くなり、伸ばすと中指の握りこみが弱くなって、「上下開閉」の感じが出しやすくなるためです。「上下開閉」とは押手の上のほうを開き気味にして、すなわち人差し指と親指との股を逆八の字のように開き、下の小指、薬指を親指に近づけて閉める形です。

昔の伝書には、押手の指の働きは「定恵善神力」とあり、親指は定む指、人差し指は恵む指となっています。人差し指は弓の力を受けないので、馬手の人差し指と同様に(左右対称に)休む指と考えることもできますが、これは遊ぶ指ではなく、親指と協力して虎の口を作り、角見を効かす働きにより、手の内を恵む指となります。

人差し指を働かせると手の内が入り過ぎることなく、控えすぎることなく剛弱(押手手首の働き)に作用します。人差し指を伸ばすと会で的を指し(厳密には左を向くが)、離れでは親指が的を指すイメージがでてきます。これが丁度良い角見の働きとなり、五箇の手の内の「鵜の首」の浮きたる感じがだせるように思います。

私は、人差し指を伸ばすべきとか曲げるべきとかではなく、握りが硬くて弓返りしない場合、逆に握りが緩くて弓が落ちる場合に、「時の手の内」として試してみる価値があると考えています。

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