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2-10 弓の扱いの枝葉末節

弓の扱いにおける枝葉末節について、どうでもいいことながら、自分では気になることを少し書いてみましょう。

弓では形が先ず気になります。まずは張りの高さです。これは常に一定の高さでなくては弓の強さが変わってしまいます。物差しで14cmとか15cmと決めている人が多いですが、私は親指を立てて手を握って計ります。狂っていれば上弦の輪を作り直します。 張りの高さが高すぎると、引き分ける距離が短くなり、関板が離れすぎて弦音がでなくなるので、鈍い感じになります。 また低すぎると、離れで弦が緩んで波打つので、手を打ったり、弓がひっくり返ったり、矢飛びが悪くなります。

弓の形はいつも元筈を持って胴のくびれを見ます。グラマーか、胸が出すぎか、尻が出すぎかを見て矯正します。胸と尻が弦と平行になるようにします。また、入木か出木か、特に関板のところ、筈の当たり所を見ます。入木が不足していれば、弓を押して矯正します。

弦は弓の中央を通っていてはいけません。矢を右に番える関係から、弦は弓の右の縁に沿っていなければいけません。これを入木といいます。この入木が過ぎても足りなくてもいけないので、手入れで抑えたりして矯正する必要があります。

それでなかなか直らない時は、弦の輪を少しずらして偏芯させます。それでも直らない頑固な出木では上弦の輪を裏向きにして掛けます。

また何回直しても滑って出木に戻ってしまう場合は関板のうら筈の付け根の左側が凹んでしまっていることがよくあります。この場合はうら筈の右側を少し削って弦がやや右よりになるようにするのが良いでしょう。

弦の上の方がすぐにぼさぼさになってしまうような場合には、関板の下側が鋭角な段差になっていることがあります。このような場合にはこの段差の角を削って滑らかにしてやると弦が傷まずに長持ちします。

私は、高さの狙いを正確にするのが下手くそであるので、矢摺り籐は普通の平籐で6cmの規定ギリギリが好みです。最近の弓はほとんどが、杉成りの飾り籐であり、細く長い籐が巻いてありますので、非常に狙いにくくなっています。 私はこのような場合には、6cm以上の籐の部分は規定に違反しない範囲で、ちょん切ることにしています。こうすると狙いがずいぶん楽になります。

握り皮は自分の手の幅、感触に合うように気になります。太さ、形、皮の質、すべり具合、柔らかさなどを調整するため、巻直しをします。昔ははがきの紙を折って調整しました。最近はゴム製のものがありますが好みによって削ったり足したりが必要です。

弓の形を矯正する方法に「むらとり」があります。これは専門の「むら師」と言う職人があり、相当な訓練と技術があります。私は昔自分の弓を矯正しようとして、洋バサミの刃でむらけずりをやったことがあります。このとき始めは案外簡単に調整ができたのに、調子に乗りすぎて行過ぎてしまい、結局弓を一本パーにしてしまいました。 皆さんくれぐれもこんなことをしないように。

弓の形を踏んで矯正するときは、ひっくり返らないように慎重にするように、弓を右手で左に押す場合には同時に左手で弦をはさむようにするとひっくり返る心配がありません。

また足で弓の胴を踏んで、手で持ち上げるような矯正をするとき、外竹をいためやすいので優しく扱いましょう。

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