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4-28 中四角の手の裏(内)について

1.中四角の手の裏


私は竹林流の「中四角の手の裏」と云うのは、中央で中押しとする基本の手の裏であり、教本などで云う「三隅の手の内」と殆ど同じと考えています。

手の裏を整える時、まず弓の外竹の左角に天文筋の上端(人差し指の付け根)と下端(小指の付け根)を当て、内竹の左角に龍(虎)の口(人差し指と親指で作る股)の右角(角見)を当て、親指の横腹を内竹(握り革)に馴れ付けて水平に伸ばし、掌の中央に窪みを付けるようにして、小指を親指の付け根に近づけて握り、次いで薬指、中指は小指に揃えるように親指との間に詰めて、柔らかく握り、人差し指は第三指(指先から三番目)をやや上に持ち上げるように張ります。

弓懐を取り、打ち起こすとき、弓は手の裏の中で回転して、虎口の中央が弓の内竹の中央に一致する中押しの手の内となります。

「三隅の手の内」は天文筋の上下端と角見との三か所を云いますが、「中四角の手の裏」はこの三か所の他に、小指の第一指(先端)が弓の内竹の側木を締める四か所の手の裏です。三隅の手の内においても、小指が緩めば離れの瞬間に弓の下鉾が暴れるので、小指は緩めないようにしなければなりません。したがって、中四角の手の裏と三隅の手の内は基本的に同義であると、私は思います。

2.四巻の書(伝書)の記述


竹林流の四巻の書の「手の裏の事」の項から「中四角」について解説します。竹林坊の書いた本文には「心は五ケと云う、また吾が加える口伝とも云う」とあり、次に「一に鵜の首の浮きたるなり(略)」と五ケの手の裏(鵜の首・鸞中・三毒・骨法陸・嗚呼立ったり)を至極簡単に列挙、口伝としていますが、星野勘左衛門が詳しく註釈しています。

「手の裏」の言葉は、弓は掌(てのひら)の当たり所によって、様々の働き、変化が生じることを意味しています。握るとばかり心得ては甚だ大雑把であり、締まり所、決め所、和(にぎり)所、意味深長な所で、考えて知るべし。五ケとは五か条を云います。(ここでは「五ケの手の内」については省略します)

「吾加」とは、前後上下に吾が力を加えるとの意味であり、前後上下に押し過ぎれば反対方向に弱る。中四角に心を据えること大事です。即ち正直に(正しく真直ぐ)、中央に据え四方に気を配ることを中四角と云います。

これは、手の裏の「剛弱所」と云い、現代風に言えば、弓を押すには上押し、下押しにならぬよう、また入り過ぎ、控え過ぎとならないように注意して、腕首が弓に真直ぐに当たる中央・中押しの手の裏が良いという教えです。

3.五輪砕きと中四角


手の裏にも、射法訓の最後に「金体白色西半月」で終わる「五輪砕き」の教えがあります。五輪砕きの教義は省略しますが、手の裏は弓の基本ですので、基礎を意味する「土体黄色中四角」から「中四角」と云います。

五輪砕きにおける方位は、東西南北の四つに中央を加えて五つであり、上述のように東西南北に過ぎれば反対方向に弱るので、中央にいて弓手の剛弱所と云います。また手の内は五輪塔の基礎のようには四角く確りと据え付けることを云います。

弓手手の裏は中央に居たまま、大指の腹根(角見)を的方向に真直ぐに押し、馬手は大指の腹根に懸けて引き、伸びて心気が満ちる時、弓手も馬手も同じ筋骨の働きにより自ずから発するものです。

射手が南面して射る場合、弓手拳(中指の第二関節)は的方向を指し方位は東団形、親指の下に揃えた三指は南三角、腕首は西半月、人差し指付け根は北円形と云います。この四方に偏らぬように、中央に握る所が中四角です。

この握った手の中に四角に弓の馴れ付く所が、内竹の入り角(角見)であり、大指の腹根の当たる所をよくよく考え見て、正しく真直ぐを鑑(かがみ)と云うことを知るべし。この五方の偏らないことを直というのです。

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