home >  弓道四方山話 > 巻の壱 「天の巻」

1-6 コツと骨法とウエイトリフテイング

「コツを掴めば、コツを覚えれば、楽にできる」という云い回しは弓道用語からきたのではないでしょうか。コツを掴むとはやり方の要領を掴むことですが、日置流や竹林流の骨法から来た云葉のように思います。道場にかかっている吉見順正(紀州竹林派)の射法訓の冒頭に、「射法は弓を射ずして骨を射ること最も肝要なり。」と云っています。
これは私の私的な解釈では「弓をひくときは、力で弓を引くのではなく、骨にはめて引くことが最も大事です。」となります。

松戸では、強い弓を引いているのはいずれも50台のおじさんばかりです。若い人はもっと力があり、おじさんよりは楽に引けるはずですが、なかなかそうはいきません。経験の浅い若い人が、強い弓を引こうとするとき、数回程度は引けるでしょうが、コントロールができませんし、基本ができなくなり結局ダメになってしまいます。

これは骨にはめて引く(関節にはめて引く)要領が判らないためです。そうすれば、それほど力をつかわずに、要所要所だけを抑えることで楽に引くことができるのです。

話は変わりますが、ウエイトリフテイングを見ると骨法との類似性を感じます。力の方向は全く違いますが、中途半端な位置では苦しく、関節がきちっとはまる位置まで持ってこないと耐えられません。またそのためには引き上げる途中の道筋を如何にうまく持っていくかが勝負でしょう。

これは弓の骨法と同じです。昔の達人の云い伝えを、今は本多流や日置流などのインターネットで見られるようになっていますが、達人は会から離れの骨法を先に覚えさせ、次に正しい弦道を確認し、引き分け、大三、打ち起こし、弓構えに戻して、腕の張り方、筋の使い方を教えています。このような意味から、弓構えや大三の位置における円相の構えが大事に成ります。これは、正しい答えを先に求めておいて、逆に戻ってくるやり方であり、じつに合理的です。この感覚さえ掴めば、コツを掴むことができるような気がしませんか。

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