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多度大社流鏑馬祭 その5

さて、一の射手が馬場末に到着すると、的が新しく掛け替えられます。再び馬場の安全確認が済むと合図扇が上がります。二の射手の登場です。

多度2004流鏑馬射手
▲掛け声も勇ましく疾走する

流鏑馬射手は「陰陽(インヨーッ)」と掛け声を発します。これは鎌倉時代の武士が陰陽道の影響を強く受けていたことに起因します。一の的は「インヨーッイ」と低い声で、二の的では「インヨー、インヨーッイ」と高い声で、三の的で「インヨー、インヨー、インヨーッイ」と更に高い声で矢声を掛けます。

多度2004馬場元へ帰る
▲三の射手まで射終わると、馬場元へ馬を帰す。

射手三騎が射終わると、続いて平騎射です。騎射挟物では装束が簡略化されて、流鏑馬よりも活動的な軽装になります。箙は用いず、矢は帯に差します。矢も鏑の先に雁又を付けず、代わりに鋲を付けます。

多度2004雁又と神頭
▲流鏑馬では鏑の先に雁又を付けるが、騎射挟物(下)では雁又のない神頭矢を用いる

綾藺笠は騎射笠(竹で編んで栗色に漆で塗った網代笠)に変わり、水干や鎧直垂は射胴着(筒袖の着物)と袴に変わります。免許の後は騎射専用の小袴という袴を着用します。小袴は通常の袴より腰板から下の横幅が狭く仕立てられていて、帯に挟んだ矢を抜きやすく工夫されています。

多度2004平騎射
多度2004矢声
▲騎射挟物は軽装で矢声も違う

行縢は着けず(御免があれば着けた時代もあった)、沓も履かず、普通の紺足袋を履いて足袋裸足で鐙を踏みます。太刀も佩かず、前差しのみを帯びます。

また、軽装になることで射易くなるのため、流鏑馬では一尺八寸角だった杉板の的を、騎射挟物では一尺五寸角に小さくします。

騎射挟物の射手も流鏑馬と同様「陰陽(インヨーッ)」と掛け声を発しますが、三の的だけは「インヨー、インヨー、インヨーッイ」ではなく「ヤアーオォ」と矢声を掛けます。

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