正射正中を目指して
弓道は心技体の一致が必要であり、その極致を一射一射に実現しようと修練を重ねている。そのような弓道精神を通して人間形成を目指している東海弓道部の厳しい中にも楽しさのある雰囲気は、ここに記載できなかった歴代の部員諾君の努力を通して伝統となって培われたものである。
様々な大会で東海の選手が技能賞を獲得することが多々あるが、これは的中のみの射に逸る他校と比べ、弓道本来の目的を求める東海の伝統ある練習の特色があらわれたものであろう。
毎年正月4日に東海弓道倶楽部と合同で開催される新年射会は常に新たな抱負と活気に満ち、春合宿では厳しい練習や創作演劇大会でチームワークを養い、7月に行われる引退式で高校3年生の部員がそれぞれの想いを語り後輩に託す。こうして伝統は次代に受け継がれていく。
将来さらに大きく飛躍せんものと部員一同正射正中を目指し、基本を重んじる練習を重ねて日々精進努力を続けている。
OB団体である東海弓道倶楽部は会員数約350名(平成15年現在約490名)。母校弓道部の後援と会員の親睦のための活動を行っており、また毎月第1日曜には母校弓道場で弓道の練習会を行い、市氏スポーツ祭など弓道大会に出場し活躍している。
顧問 大野寛順、稲田智孝(故人)、堀場源造、稲葉悠之助、佐藤泰年、亀井章広各先生
注:本文は東海学園弓道部戦後復活50年記念祝典において配布された資料(東海学園百周年記念誌に掲載された山田弾六氏・大野寛順氏の著述の複写と思われる)を、峯茂康(高35回卒)が抜粋引用加筆したものである。文責は峯茂康にある。
峯 茂康 | 2003/10/01 水 00:00 | comments (1)
| -
コメント
さて、先日京都の御弓師柴田勘十郎氏より直接聞いた話が感慨深かったので、失礼ながらこの場を拝借させていただきます。
1年生がゴム管を終えてから初めて手にする3k、3.5kの弱弓のことです。おそらくは東海の道場以外でかかる弱弓を見ることは無いのではないでしょうか。
あの弓の制作者はかの柴田勘十郎氏であり、その依頼者は大野先生であることはご存知でしたでしょうか。
小学校を出たばかりの少年の体躯に、弓の反動はよろしくないという大野先生のお考えなのだそうです。
直心などの弓が並ぶ中、実は、3kの弱弓はその価格にして直心等の2張り分弱になるそうです。つまり3kの弓が一番高価な弓であり、銘こそ無いものの、柴田勘十郎作だったわけです。
わざわざ京都まで出掛けられ、じっくりと最高の弓師と語り合われ、制作を依頼し、グレーの山高帽をかぶってニヤリと笑って店を後にする先生のお姿が眼に浮かぶような気がいたしました。
先輩方・後輩諸君の優れた戦績は、忘れがちではありますが3kの弓から産まれたものであり、何よりも東海生・OB諸兄の全員が生まれて初めて手にする弓は、当世きっての教育者の苦心の作であり、最高の弓師の作であったというわけです。斯様にして、身体に無理なく弓の基本を学ぶことができたのです。
卒業後30年近くたって師の恩が身にしみた次第です。まさに射道は盛徳の道、目指すべきは正射正中ですね。