4-13 続・押手の力学的作用
2004/03/26 金 00:00
櫻井 孝
会を脇正面から見る時(X−Z平面)、矢筋のラインは両肩の水平線から約13cm位上方で平行線になっており、真上から見る時(X−Y平面)、矢筋は頬付けにあるので、これも両肩の中心線から、約13cm程度水平方向に離れ、結局45度方向の平行線になります。
即ち、押手の拳は肩の付け根のX軸線上から、それぞれ13cmだけ45度方向上方、前方にあるので、押手の腕は矢筋(水平線)に対して、約10度程度上方、前方を向く角度を有していることになります。したがって、押手の腕は両肩の線と真っ直ぐではなくて、左肩の付け根で折れ角を有しています。
20キロの弓を引く人の、押手の腕と拳に作用する力を分析すると、左肩の付け根と弓を握る拳(手の内)においてX,Y,Zの三方向の力と三方向に回転するモーメントとなります。
肩の付け根で考える時、X方向の力は弓と同じ20キロですが、腕に働く力は、角度のセカントシータ分により若干増加します。ここで腕の長さを約45cmとすると、Y方向分力(水平後ろ方向)は20キロのサインシータ分、即ち20×13/45となります。また、Z方向分力(下向き)は肩の付け根の折れ角によって、これも20×13/45と同じ値になります。
また、肩の付け根の水平方向、鉛直方向の回転モーメントもこの偏芯13cmにより発生します。もう一つの捻りモーメントは妻手の捻りと釣り合う押手の捻り(半捻半搦)です。
ここまで来てやっと押手手の内の話となります。押手手の内の力も、3方向の力と3つの回転モーメントがあり、X,Y,Z方向の力は肩の付け根の力と同じですが、手の内の回転する力は握っている所からの偏芯となります。
即ちZ軸回りの回転モーメントは角見の働きと言い、弓を捻る力で、弓の幅の中心と押手の親指(矢筋)との偏芯(約2cm)によるモーメントです。
また、Y軸(水平軸)回りの回転モーメントは上押しによる回転モーメントです。
押手は中押しがいいと言われますが、和弓では上が長く下が短いので、会で上側が大きくたわんで、握りの位置で約10度程前傾回転が生じるため、上押しが必要になります。これは古書では握りの10cm位上(弓の剛弱所)を押しなさいと教えています。また矢を右側につがえますので、矢に偏芯モーメントが作用します。
洋弓のように上下が対象で、弓をえぐって矢が中心を通るようになっていれば、回転モーメントは生じないので、握りは虎口の線だけで受けて握らず、上押しも、角見も効かしてはいけないのです。
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