4-13 続・押手の力学的作用

2004/03/26 金 00:00
櫻井 孝



しかし、和弓ではこの2方向に偏芯した捻りが必要になります。このように適切な上押しと角見が中押しであり、過ぎるものが上下左右に弱る押手なのです。

上押しは親指の虎口の押しと3本の爪揃いの中心(薬指)との偏芯によって加えることになりますが、押手の形ガ常に弓に直角であれば弓がたわんで回転すると自然に上押しになるのが基本(骨法陸の手の内)です。

ここで、角見と上押しの2つの捻りモーメントは弓の力と程よい調和が必須であり、足りなくても、多すぎても、離れが狂い、矢が前後上下します。伝書ではここのところの微妙な働きを剛弱所と言って、弓手手首の脈所の効かせかたで説明しています。

即ち水平の捻り(角見)が強すぎると手先でこねる離れとなり、後ろ方向に開く力が強すぎると振込み離れとなります。また手首の親指を入れて偏芯量を小さくすると、それ以上ひねることが出来ないので角見が働かないで止まったままの離れとなります。

同じように、上押し、下押しも同様に弱すぎても、強すぎても正しくありません。離れで弓の下側が的の方に出て弓が後ろに倒れたり、逆に上側が的方向に出て前に倒れたりします。またこのとき離れで押手が上がったり、下がったりとなります。

これらは五つ手の内(吾加の手の内ではなく)と呼ばれ、上下左右と中央の五つの品として以前に書きました。もちろん四つは悪癖であり、中押しが良い手の内であることは言うまでもありませんが、この中押しは先に述べたように程よい角見と上押しが効いたものを中押しと呼んでいるのです。

ここで、角見の捻りモーメントを維持しているのは、弓を握る摩擦力であり、押手がつるつるしていたり、汗などでぬるぬるしていると滑ってしまいますので、筆粉などを利用するのも良いでしょう。

何れにしても、押手は手首を回して(脈所を入れすぎるとき)腕の力の中心を親指の線に近づけるとき、これは離れで捻る余裕がなくなり、効かなくなります。 しかし、手首を控えすぎると押せなくなりますので、ひとさし指をなるべく開き気味にして、やや、控え気味で我慢できるところが、丁度良いと思います。

したがって押手の軸力は虎口(人差し指と親指の股)の中心に作用させたままで、親指と3本の指を効かして弓の右角を押す、角見の働きが肝心であり、押手を入れて(回転させて)押手の軸力を親指の線に近づけすぎると角見が効かなくなります。

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