1-29 射法訓全文の解説

2019/01/23 水 18:00
櫻井 孝


弓道は戦後GHQによって禁止されましたが、1949年(昭和24年)に日本弓道連盟(宇野要三郎会長)が発足し、1953年に弓道教本第一巻が発行されました。

「射法訓」は初代会長の宇野先生が紀州竹林流の相伝者であったことから、日本弓道の射法・射技の理念を明確にする目的で、「礼記射義」とともに巻頭文として採用されたものと考えられます。その内容は、教本第一巻53〜55頁に「吉見順正の遺訓」として、吉見順正の経歴と共に詳細に解説されていますので、お読み頂くことで省略します。

ただし、礼記射義も射法訓も教本に掲載するにあたって、巻頭文であるので簡潔に覚え易くする必要から、長い文章から切り取って編集されたようです。しかし、先生は射法訓の原文については何も述べていないため、その出典は不明となっています。

2.弓道教本の射法訓には前文があるらしい


1)「弓道への誘い」の記事をみて


私は1997年(平成9年)ころからインターネットに「弓道四方山話」を書いているうち、奈良県の松岡先生のサイト「弓道への誘い:日本弓道の精神」(現在終了)に、弓道教本の「射法訓」の前文を発見したという記事を見つけました。メールでお話を聞いたところ、滋賀県の神社で見つけた時は戦慄が走る思いで、カメラのシャッターを切ったと云っていましたが、どこの神社か、原典の文書をご存知かを聞かずじまいでした。

同じころ名古屋の梶田先生、故松井巌先生が「射法訓の全文を探しています」というサイトを見つけ、そこには斎田先生から同じ文書がありましたが、原典は不明でした。

また、千葉の故松枝先生もその著「弓道三昧」に射法訓の全文を紹介していますが、出典は不明です。さらに最近ネットには「射法訓の全文」が多数出ていますが、その多くは私の「弓道四方山話」からの引用で拡散したものと思われます。

2)前文にからむ言葉を弓道教本に見つけた


射法訓の全文については次項に記しますが、この前文に関連する言葉が弓道教本の中にあれば、前文は実在しているはずと考えて調べた結果、以下の文章をみつけました。
・第一巻には、本文の解説はあるが、前文については触れていない。
・第二巻には、18頁に「金体白色西半月」は竹林派の五輪砕きからの説明とある。
・第三巻には、鈴木伊兵衛先生が6頁に、「弓矢は押し引き自由の活力を有し」、「僅かな心の動揺も、正鵠を失い易い」とあり、7頁には「弓射は無心の弓矢を使用して、不動の的を射抜く」、「唯これを己に求むる」とあり、前文の言葉を引用している。

[7] beginning... [9] >>
comments (0)
-


<< 1-28 礼記射義訓纂について
12-22 「射法本紀」概略 >>
[0] [top]


[Serene Bach 2.24R]