3-26 弓道は天邪鬼
2018/12/26 水 18:00
櫻井 孝
弓手手の内は親指の付け根の内角を角見と呼び、ここを働かせて押すとき、弓の半幅分を捻る働きができて、親指の上に載っている矢を真っ直ぐに飛ばすことが可能になります。しかし、引き分けや会に至るとき「角見を効かして」弓手手の内を押し込むと、手の内は捻りに耐えられずズルッと滑り、捻りが消滅して効かないものとなります。
5.弓手は強く握ってはいけない
弓手手の内は柔らかくして自然な弓返りをするのが三段以上の条件ですが、これは決して手の内を緩めて回すのではなく、弓が落ちて下がってもいけないし、弓が暴れてもいけません。
6.極意の手の内「らんちゅう」、「ああ立ったり」
伝書には五箇の手の内と呼ばれる極意があります。このうちの「鸞中、卵中(らんちゅう)」と云って、大鷲が卵を握るように、あるいは雛をかき抱くようにと云います。卵は強く握るとき割れてしまいますが、緩すぎると落としてしまいます。雛も強く抱き過ぎると死んでしまいます。しかし大鷲のがっちりとした手で優しく握ることです。
別の極意の手の内に「ああ立ったり」と云って、赤ちゃんが椅子などに掴まり立ちするときのような握りがあります。柔らかいながら確りと握って働きがあるので、「老いて乳飲み子に教わる」と云います。
7.胸の中筋より宜しく左右に放つべし
胸の中筋より左右均等に離すのは縦横十文字に叶った均等の離れであり、船に乗り竿を挿した時のように、船と岸はさっと別れるものです。
しかし、会の位置では矢は頬付けに付いているので、両肩を結ぶ線とは約13pほど前面にあり、大離れで弓手も馬手も大きく矢筋方向に開くとき、両腕は惰性で両肩を結ぶ線上まで開いて止まるはずです。しかし、弓手は振り込んだり、捏ねたりするのは駄目で、全く微動だにしないのが良いのです。これも矛盾です。
8.弓手は留めて、馬手は大離れとする
会では親指の上に矢が載っていますので、離れの瞬間に弓手も馬手も全く動かず、肩も胸も不動のまま離れることは的中の必須条件です。
これは上記7の項と矛盾しますが、両肩関節に載せるように矢筋に近づけて、離れの方向を接戦方向に左右同時に働かすことができれば、会が割れて矢が飛び出した後に、惰性で一直線に伸び、弓手は留まり、馬手は真っ直ぐに飛ぶので、矛盾ではなくなります。
[7] << [9] >>
comments (0)
-
<< 4-27 弓手の働きについて
9-14 伸びが射に与えるもの >>
[0] [top]