ユガケ改造二題

2014/02/05 水 20:00
峯 茂康



image[改造を終えたK木先輩の諸ガケ]

次は、I川先輩の五本指竹林ガケです。ちなみにK木先輩もI川先輩も弓道四方山話の櫻井先輩と同期です。つまり私の中学高校弓道部の20年先輩です。

さて、このI川先輩の特殊なユガケは竹林流のある射手が自作したものを譲り受けたのだそうです。その射手は一時期小笠原流に学んだこともあったそうで、恐らく儀式で自分が使う目的で作ったのだろうと思われます。遠目には普通の諸ガケに見えます。

image[改造を終えたI川先輩の五本指竹林ガケ]

竹林ガケを五本指にしただけかと思ったら、何故か四ッで取り懸ける仕立てで帽子が非常に長くなっていました。I川先輩がこれで弓を引いてみたところ、どうしても離れで引っ掛かるとのこと。そこで帽子を短くして三ッで使いたいというご依頼です。

ところで、小笠原流の諸ガケは四ッで取り懸ける人もいるからカケ師は注文を受けるときに気をつけなければならない云々ということが書かれている本もありますが、 正式には戦場で特に必要がある場合(ことさら強い弓を引かねばならないとか寒くて指がかじかんでいるとか)を除いて三ッ以外で取り懸けることはないと私は教わりました。

それはさておき、この特殊なユガケの帽子と台革の接続部は縫い目を樹脂のようなもので固めてあって外せそうにありません。そうすると帽子先を解いて頭から削るしかないのですが、どれだけ親指を短くできるかは角木の内側がどこまで深く穿ってあるのかによります。I川先輩はそれで出来る目一杯で良いとのことなのでお引き受けしました。ついでに薬指に貼ってある脂革は撤去してくれとのこと。

image[改造を終えたI川先輩の五本指竹林ガケ]

この「脂革(やにかわ)」というのは竹林ガケの特徴の一つで、人差し指と中指の腹、そして帽子の先に貼る表面がザラザラした当て革のことです。この当て革にギリ粉を付けるので脂革と呼びます。ここはユガケの一番消耗する部分なので簡単に交換できるようになっているのです。従って本来は糊で貼るだけで縫いつけることはしません。脂革には鹿の頭部や首の部分の革を用いると言われています。

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