手袋考
2013/05/26 日 21:52
峯 茂康
これから騎射を志す若い人達のためにも、なんとか安価に短納期で出来ないものかと、弓具店やカケ師と相談しながら私もこれまで二つほど誂えてみましたが納得のいく結果にはなりませんでした。
そうであれば自作するより他ありません。実は騎射の門人なら手袋の自作は珍しいことではなく、手袋の型紙は兄弟子から写させて貰えます。
私は三重の先輩(鞍の記事で書いたお医者さん)から型紙の写しを頂いたのですが、その際に、型紙のまま縫っても使い物にはならないよ、縫いなが ら自分の手に合わせるんだよ、と教わりました。とにかく作ってみて型紙を修正し、また作っては修正を繰り返す。こうして自分専用の型紙を育てるのです。
私はこの菖蒲革の手袋で10作目(つまり型紙のバージョン10)ですが、すでに縫っている途中から次はここをこうしたいという問題点というか改善点が見えてきました。なかなか納得のいくものは出来ません。カイゼンに終わりはないのかもしれません。今は後輩達もそれぞれ工夫しながら自作するようになりました。皆一様に、処女作を仕上げたらすぐにもう一つ改良版を作りたくなる、と言います。
さて、フランス人の後輩は留学当時に私の手袋を貸したところ問題なく使えたようでしたので、私の型紙のままで大丈夫だろうと高をくくって縫ったのですが、プレゼントの手袋を挿してみたら彼には少し窮屈だったようです。それでも彼は手袋を気に入ってくれて、私の縫った手袋を携えて今春場所のために来日し、津和野と浅草の流鏑馬に出場したとのことでした。
今回は結果オーライでしたが、たとえ手形を取って合わせようとしても他人の手袋を縫うのは素人には難しいです。一流のカケ師は依頼主の手にピタリと合わせます。当たり前のようですが、それがどれほど凄いことなのか再認識しました。
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