小笠原流歩射でも斜面射法がある

2007/01/14 日 14:11
峯 茂康



騎射の項で「正面射法は騎射でこそ合理的である」と述べましたが、上記のような理由から小笠原流では騎射へ進むことを前提として歩射を稽古していたと思われるので、スムースに騎射へ移行できるように歩射でも正面射法になったのではないでしょうか。

斜面射法の流派から「正面射法は騎射だけのもので歩射で行うのは間違いだ」と批判されることがありますが、実は私自身も今のところ上記のように騎射へステップアップするためという以外に歩射における正面射法の必要性は思い当たりません。世界中の弓射を見渡しても斜面射法が主流で、これが実戦的な歩射の姿であるのは疑いようがありません。

明治時代に体育という概念が輸入されて以降、正面射法は左右対称で体育的に良いのだという反論も目にしますが、力の使い方を指導する上でのメタファとしての左右対称は理解できますが、冷静に考えれば片手で弓を支えているのですから左右同じということはあり得ません。

明治34年に発行された「諸流弓術極意教授図解全」の小笠原流の項には「其人のかたちによりて初よりかた打上に引ともよし」という教歌が載っています。片打上とは斜面のことで、正面は諸打上と言います。つまり小笠原流であっても、射手の個性(骨格や筋力)によっては斜面打ち起こしでも良いということです。特に筋力の弱った老人には「弓手の力を助くるの功著し」と斜面を勧めています。

ちなみに、大和流には「片打起し」「諸打起し」という用語があるようですが、これは斜面打起しで左右拳が片釣り合いにならないように戒めて言う言葉で、諸打起しは両拳に高低差のない正しい打起しのことです。

[7] beginning...
comments (0)
-


<< 騎射でこそ合理的な正面射法
肘力で止めずに引取る >>
[0] [top]


[Serene Bach 2.24R]