2-1 弓の薀蓄 加筆訂正
2-2 続・弓の薀蓄
2-3 弓の強さと厚さ、接着剤の働き
2-4 偏芯モーメント
2-5 矢の回転
2-6 外れの誤差論 加筆訂正
2-7 和弓では自分で狙いが判らない 加筆訂正
2-8 狙いと矢乗り
2-9 高さの狙い 加筆訂正
2-10 弓の扱いの枝葉末節
2-11 上肩妻肩を地紙に重ねよ
2-12 続・狙いについて
2-13 空中に浮んでいる矢を真っ直ぐに飛ばすこと
2-14 矢の筈を弦が押し出すこと
2-15 矢筋方向に飛ばす射法
2-16 弓道における相反性
2-17 続・高さの狙い 加筆訂正
2-1 弓の薀蓄
1)弓の形
日本の弓が世界の弓のなかで一番長くて美しいということが教本の始めに書かれています。
西洋では弓はアーチ、あるいはボウと呼びます。アーチは放物線形状であり、力学的にすばらしい力があります。アーチを上手に操る人をアーチスト(芸術家)と呼び、建物や橋に応用する人をアーキテクチャー(建築家)と呼びます。
中国の弓は漢字が示すとおり円弧状ではなく湾曲した弓で、すばらしい性能があります。一方日本の弓は、魏志倭人伝に「兵用矛楯木弓(武器は矛、楯、木弓を用いる)」「木弓短下長上竹箭或鐡鏃或骨鏃(弓は上が長く下は短く、竹の矢で、鉄製の矢じりあるいは骨製の矢じりである)」と記されているように、古代(三世紀頃)から中央よりも下のほうを握る射法であったことが判ります。
日本の弓の形を見るとき3つの特徴があります。
まず、弓の弦を外すと逆に反り、裏反りと呼ばれます。これは土木建築の分野ではプレストレスと呼ばれ初期張力を与える手法です。この裏反りはギターの弦を締めるように弓の本来の力を強める働きがあります。裏反りによって弦が戻った時も緩まず、強度を保ったまま返るので勢いがでます。しかし裏反りが強すぎると、弓が敏感になりひっくり返る危険性が大きくなります。
2番目の特徴は弓の字の形が示すように湾曲していることです。これは先ほどのプレストレスが全体的に加えられていたのに対して、3の字状に湾曲して与えられていることです。円弧状の弓では力のかかる握りの部分に力が集中してその部分が折れやすいのですが、3の字状に湾曲させると中央の握りの部分には初期の状態で逆に曲げられているので、その分だけ余裕となり強度が高くなります。和弓の芸術的な完成度の高さはこの湾曲したプレストレスのかけ方にあります。
3番めの特徴は握りの下が短く上が長い点にあります。これについては矢にかかる力が下向きに作用し、矢が上向きにホップするため的中にはマイナスとなりますが、高射砲のように敵陣に打ち込むには楽であったのかも知れません。
2)弓の力学
今日は弓の力学について少しお話ししましょう。弓の中央を握ったと仮定すると弓の強さを数式で表せば、以下のようになります。
P=24・E・I・a/L^3
注)理科系の方からこの式について質問がありましたので、注釈をします。
土木、建築、機械工学において、中央に荷重が作用するとき、梁のたわみの式は a=P・L^3/48・E・I となっています。しかし弓の場合には矢束は弓の変形の他に、弦が幾何的に三角形に変形して矢束となり、概ね同じ分だけ変形するものとして48分の1でなく、24分の1としたのです。
但し、これらの式は弓の剛性が等断面であることと、微小変形理論に基いていることから、厳密には若干の誤差が生じるので、補正係数が必要となりますが、概算的には無視できると考えました。厳密には有限変位骨組構造解析プログラムに入力すれば、簡単に求めることができます。
ここで、Eは弓の材料の弾性定数でヤング率と呼ばれます。木や竹のヤング率は種類によって異なりますが、鉄の約20分の1程度。竹は少し小さめですが伸びの限界ひずみは大きくなります。グラスファイバーは弾性係数が高く、カーボンファイバーはさらに強く鋼に近い強さがあります。
鎮西八郎為朝が鉄の弓を引いたと云う伝説がありますが、弓の心材に鋼を用いたのかも知れませんが確かではありません。
aは矢尺の長さ、L^3は弓の長さの3乗、Iは弓の断面の剛性です。すなわち弓の強さは矢尺に比例し、弓の長さの3乗に反比例することが判ります。また剛性Iを数式で表すと、
I=B・t^3/12
となり、弓の強さは弓の幅に比例し、弓の厚さの3乗に比例します。
弓の幅は約3cm程度の一定であるので、弓の強さは弓の厚さによって敏感に変化します。初心者の弓は5分(15mm位)の厚さで10kgの強度であり、6分の厚さで約20kg、江戸時代の達人の弓は7分、30kg程度ありました。
2-2 続・弓の薀蓄
今日は洋弓と和弓と比べて見ましょう。
洋弓の特徴は上下が対称であること、矢を左側にのせ、弓を中央までえぐっています。ゴルフのパターのように力の中心に矢が通るように工夫されていることが判ります。しかしこうすると握りの部分で弓の幅が半分になり、弓が折れてしまうのでこれを防ぐため、弓の厚さを分厚くしています。
和弓では矢は右側に番えますが、洋弓のように道具を合理的な目的のために、切り刻んで加工することはしません。
このため素直に弓を引くと弦が弓の中央に戻ろうとするので、矢はスライスしてしまいます。これを防ぐため弓は製作時に楔などを用いて横にも湾曲させ弦が弓の右側に来るように作っています。この製作時の形を入木というのは良くご存知のことでしょう。しかしこのように弓を入木にして作っても、和弓独特の射法が必要となり、初心者のうちはスライスしてしまいます。
今度は、矢のことを少しお話ししましょう。もし狩りに行ってウサギがたくさん出て来たら矢を2本番えたくなるでしょう。2本番えて引きますと、矢は半分までしか飛びません。倍の重さの矢を使うときも同じです。エネルギーから考えると当然ですよね。
矢は放物線を描いて飛んでゆきます。強い弓だと放物線のライズが小さいのでほぼ直線的に見えますが、弱い弓ではやまなりになります。また距離が遠くなると角度を上げる必要があり、遠的をすると良くわかりますね。
矢を番えないで素引きで離すと弦が切れます、また不本意ながら矢こぼれしたときも弦が切れ、顔や手を打ち、痛い思いをします。これらは矢にエネルギーが伝わらないので、弦にエネルギーがかかり切れてしまうためです。
もう一つ経験談をお話ししましょう。これもやってはいけませんが、羽のない巻き藁矢で的前を射るとどうなるでしょうか。この場合、矢は半分位までは真っ直ぐ飛びますが、途中で大きく上下左右に曲がり、行き先が定まりません。外に飛び出てしまう恐れがあるほどです。したがって巻き藁はむやみに離れて行ってはいけません。
では羽のある矢を真上に向けて飛ばすと、矢は頂点まで羽が下にあり、頂点でクルリと向きが変わり下向きになっておちてきますが、羽のない棒矢では頂点で向きが変わることなくあらぬ方向へ飛んでいってしまいます。これは羽の空気抵抗が飛行機の尾翼のように重要な役割を果たしていることがわかります。
しかし羽は鷹、鷲などの高級な羽でなくても、カラスや七面烏でも変わりなく、少々切れてボロボロになっていてもまったく変わりはありません、国際天然記念物級の鳥の羽は、連盟で将来禁止すべきと思います。
2-3 弓の強さと厚さ、接着剤の働き
弓を手入れする時、乾いたタオルで弓の側面(側木)を良くしごきます。これは湿度を良くふき取ることであり、弓の合板の接着を管理することです。
弓の強さは幅に比例し、厚さの3乗に比例することは以前にも書きました。ここで接着剤がはがれて、外竹、ひご、内竹の3枚に分離してしまった場合を考えましょう。3枚の厚さが等しい場合、板厚が3分の1になると強度は27分の1が3枚となるので、結局9分の1の強さになってしまい使い物にはなりません。いっぺんに全てがばらばらになることはありませんが、接着剤の効能は極めて大きいと云えます。
弓を一杯に引く時弓は曲げられて、外竹は伸ばされ、内竹は縮められますが、弓の厚さの中心線では伸びも縮みもなく、これは中立軸と呼ばれ、力が作用しません。従って中央に高価な紫檀などの木材を合わせても、装飾だけであり強度的には関係しません。一番働くのは表面の竹であり、外竹が壊れやすいのはこのせいです。また弓の内竹は上下とも短く作られ、関板によって抑えられ接着されています。この関板は内竹を両側から抑えて力を伝えているので、大変に重要です。上下の籐が緩んで取れたままになっているのは、関板がはがれる恐れがあります。
私は上下の関板の接着剤が相次いではがれたことがあり、自分でボンドを付けて修理したことがあります。外竹が切れた場合に籐を巻いて使うことがありますが、この場合、籐をいくら巻いても、殆ど強くすることはできません。切れた繊維に対して直角にグルグル巻いてもその籐には力が作用しないためです。それ以上に壊れないように抑える働きしかありません。
2-4 偏芯モーメント
弓は力で引くな骨で引け、とか骨法と云う云葉を日置流、竹林流ではいいます。私も骨にはめて引き分ける考えを信奉しています。では極端な話、骸骨が弓を引くとどうなるか考えてみましょう。
昔の人には、推手の力、勝手の力、肘の力と云う表現はありますが、偏芯や偶力によるモーメントの概念がありませんでした。モーメントというのは天秤の釣り合い、洗濯ハンガーでのバランスと同じです。
和弓では横から見るとき、矢の位置(押手、勝手)と両肩の高さには約10cm程度の偏芯があり、上から見るときも、矢筋(押手、勝手)と両肩の中心線とは約10cm程度偏芯しています。
ここで、骸骨のままではガシャと戻ってしまうので、筋肉をつけましょう。まず両肩の筋肉、上腕の筋肉、腕の筋肉、手首の筋肉、握力などすべてが必要です。ここで、弓と弦の戻る水平の力(軸力)の大部分は両肩の骨で支えれば楽に抵抗できます。しかし、この水平力と縦横の偏芯によるモーメント分は、押手の上押し、角見の力と肩との偶力、および勝手の掛け口の張りと肩との偶力によって釣り合わなければなりません。この釣り合いモーメントが肘を締め、伸びあいとなって離れを誘う原動力といえます。しかし矢尺を大きく取りすぎて、偏芯モーメントが大きくなると、たぐりとなり緩む原因となります。
昔の教えではこのモーメントについて、そりはしにする、とか抱きかかえる、張りをもたせる、絞り込むという表現をしているのが、同じ考えと思います。弓の薀蓄と題して以前にも書きましたが、和弓は上下が対称でないため偏芯モーメントが発生し、弓の反発力は約10度位の角度で下から斜め上に返って来ます。このため押し手は少し押さえつけるようにする必要があります。いっぱいに引き込んだとき弓は握りの位置で約10度程度傾きますので、結局押し手は弓に直角に当てるのがちょうど良いことになります。
初心者のころ私もそうでしたが、親指の皮が矢で擦れて血がでることがありました。これは、弓の上向きの反発力に対して、上から押さえる押し方ができていないためです。
また和弓では矢を弓の右側に番えますので、弓の幅の半分だけ偏芯モーメントが発生します。したがって弓手の握りの要領が判らない初心者は矢がスライスして前に出ます。
角見を効かすというのは、親指の力で弓の角を押すと矢の位置と同じ線上となり、偏芯軸が釣り合います。しかし弓を手首でこねて、離れの瞬間に手首で振るのは良くありません。ゴルフでもスライスを直そうとして手首でこねるのはよくありません。
2-5 矢の回転について
石岡先生の「弓道の新研究」に、矢羽の働きによって矢には回転運動が作用して矢飛びが正確になり、的中が向上すると云う主旨のことが書かれていました。そのとき、私は矢が安定するのをコマ作用のことを云っていると思い、これはないと思いました。
「弓道の新研究」は凄い本ですが、中には間違いもあると思ったものです。矢羽は整流効果が強いと同時に、羽に直角の作用として回転にブレーキがかかるので、風車のようにはグルグルと回転しないはずと思いました。
冬の合宿の時、SさんからNHKの稲垣先生のビデオを見せていただいた時、丁度この答えがテレビで種明かしされました。
矢は羽の方向(甲矢、乙矢)によって2、3回程度回転することが判りました。これは矢に赤い糸を付けて飛ばすと、糸が巻きついて2、3回転していることが確認されました。
回転がない場合、矢に曲がりなどの誤差があると、矢飛びには誤差を生じますが、回転が生じると矢飛びの誤差が、一周して平均化され打ち消されることが判りました。従って「弓道の新研究」は正しかったのです。自分の解釈が浅はかさであったと判りました。
2-6 外れの誤差論
自分はどうして中らないのだろうと思う時、自分の射が理想的な射法に至らないためと勝手に解釈し、卑下していませんか。
それは確かにありますが、理想的な射でなくても、そこそこの中りは出るはずです。誤差論で考えれば、的の半幅(一尺二寸的の半径)は約180mmであり、28m(的から眼までの距離)で割れば6mmとなります。つまり眼から1mのところにある半径6mmの的を狙っているのと同じことです。
さらに、弓から眼までの距離を0.5mとすれば、押手の位置で半径3mmの的になります。勝手の位置が正しい場合には、押手の誤差が3mmまでの範囲内であれば的中するはずであり、狙いをこの程度合わせるのは容易な事でしょう。
しかし実際にあたらないのは、勝手がこれ以上に動く場合と、弦が矢筋方向に戻らないことが考えられます。いずれにしても、会の状態で空間に浮かんでいる矢を、そのまま矢筋方向に真っ直ぐに飛ばしてやることがポイントでしょう。
そして弦の戻るみちは機械的にそろっと戻してやろうとすると、往々にして乱れるので、むしろレールを決めてフォロースルー(ゴルフのように)まで軌道を決めるのがかえって安定すると思われます。
要するに、外れるのは誤差論ではなく、離れで自分がブレたり、バランスを崩したりするため、曲がって飛んでしまうためであるといえます。
2-7 和弓では自分で狙いが判らない
アーチェリーでは半身で引き、矢乗りは自分の目で見ながら引くので、どこを狙っているかは自分で判ります。日本の弓以外の弓はほとんど、鉄砲の照準と同じように自分の目でねらいを定めます。すなわち右目で見る場合には弦を右目の線上に合わせ、両目で見る場合には弦を鼻、あるいは口割(縦の線)に合わせることで照準ができます。しかし和弓では矢が頬にあり、目線と偏芯しているので自分の目で自分の矢の方向を照準することができません。半割にすれば矢乗りは的に向くと云われていますが、それは標準的なことであり、直接自分の目で確認できないもどかしさがあります。
洋弓のように矢尺を短くして直接照準する射法と、和弓のように両肩が水平になるところまで十文字に引く射法を比較すれば、単に当たりだけを目的にすれば、和弓は合理的ではありません。しかし、古代から長弓を使用していたことは日本人が東夷と呼ばれ、「東方の大きい弓をもつ人」の意味と聞ききました。長弓は十文字の射法の必然であり、古代から合理性よりも、形の美しさを追求する民族性があったのでしょうか。
狙いは両目で的を見たとき弓が2重にぼやっと映ります。この時左側の像が右目で見た像で、その左側の籐で的を半割とするのが狙いであると教えられます。なぜ右目なのか、なぜ籐の左側なのか、と疑問に思うことはありませんか。
矢の延長線と目線がずれている為、直接は見えません。矢に近い右目が主体になりますが、弓を見るのでなく的に焦点を合わせてください。このとき顔の大きさ、頬骨の出っ張り具合により若干変わりますが、私の場合右目と頬付けの矢の中心の間は約35mmです。的から右目までの距離と的から弓までの距離を比例で低減させると約33mm程度となり、ちょうど偶然に弓の幅に一致し、左側となるのです。
また、物見(面の向け方)によっても偏芯距離が変化するので、かなりちがってきます。物見をしっかり向けると的が左へ離れてきますので、それを合わせると矢は後ろへ飛びます。前に矢が出る人は特に物見をしっかり向けるのが良いでしょう。
さらに、物見を上に向けると矢は上に飛びます。遠的練習の後は注意しましょう。
また口割が下がると矢は上に飛びます。矢を通常より下に番えるときも、矢は上に飛びます。これらはいずれも反対にすると反対の作用になります。初心者の方は自分で試して納得されるのが良いでしょう。
2-8 狙いと矢乗り
狙いのことはこれまでくどいくらい書いてきましたが、初心者の方の多くが的のはるか後ろを狙っていることを知らないで行っています。その結果、押し手や髪を払っており、弓返りしないのです。
矢の飛んでゆく方向から狙いを見つけてはいけません。鉄砲ならば誰でも銃身を合わせて狙うでしょう、弓でも矢が的の方向を向いていないのは論外です。矢が曲がって飛ぶ分だけ狂わせて狙うのは上達を拒否していることに他なりません。まして、後ろを狙っていることを知らないのはあまりにも無知と云うほか在りません。
弓のマナーとして「他人の矢乗りを見るな」と教えられていますので、誰も矢乗りについて指摘しません。これは矢乗りが判っている人に対して、とやかくおせっかいを云うのは失礼ですよと云うことです。しかし、矢乗りそのものが判っていない人にはしっかりと教えてあげるべきだと私は思っています。
いつも云うように和弓では矢は前にスライスするようにできているので、初心者のうちは上押しと角見を効かすコツを練習することが肝心であり、狙いを矢所から調整してしまうのは、ダメダメと云いたいです。
弓道教本の4巻を読みますと、故中野慶吉範士十段は以下のように教えています。{弓の狙いと矢乗り}について、
「矢は常日頃より、必ず的心につくようにしていなければならない。それには物見を正して、真の矢束を引き分け、頬付けを定め、胸弦がつくなどして整えた会で、しかるべき人に、後ろから矢が的心に付いた所を教えてもらい、良くその位置を弓を透かして確認して、正しい矢乗りを身に付けることである。」
「矢が前に出るからと後ろに付け、後ろに行くからと前につけたりして、的に当てるなどは、正直なことではない。」
「的心に矢をつけて前にそれるとしたら、一層に技や均衡を修練してゆくのが修行道なのである。」
「矢摺り籐を透かして、あるいは弓で的を半割して的を見るが、それは単に的を見るのではなく、その的心を目に映すという見方であれば、的に捕われない心眼となる。」
「要するに心が澄めば、目も澄み、精神が統一されるのである。」
以上全て受け売りであります。全く良いことを云っています。
2-9 高さの狙い
高さの狙いについて、難しいことは省いて櫻井流を述べましょう。
1.弓を握る位置を一定にすること。
これは射法以前の問題で、握る位置がいい加減では正しい射は得られません。
2.矢の番える位置を一定にすること。
昔の口伝に筈を上下すると矢が上下するとあります。弦に直角が標準であり、弓に直角までの範囲。
3.物見が一定であること。
物見(首筋)はいつも一定で鉛直に向いているのが望ましい。顎が緩んで首筋が狂うと、高さの狙いも相当大きく狂ってしまいます。この首筋が矢どころに大きな変化を与えるのは、わざと首を傾けて試してみれば直ぐに判ります。また、途中で締め直すのが癖になると首筋の角度が真っ直ぐかどうか判らなくなります。
したがって、首筋は力みをぬいて伸びやかに顎を軽く引き締めて、絶えず鉛直に保つように心がけることが肝心です。
大三で押手を見たりして、顎が上を向くと矢は上に飛びます。途中で顎を閉めると矢は下に落ちます。
4.頬付け(口割)を一定にすること。
頬付けは矢飛びの高さに極めて敏感ですので、いつも一定になるように、練習しなければなりません。
口割が高いと矢は下に落ち、低いと上に跳びます。これを勢いが良かったと勘違いしないで下さい。
また口割よりも下がると、緩み離れとなったり、離れが出なくなりやすいので、常に口割より低くならないように注意する必要があります。これは張りを保つとも云います。
5.矢束が一定であること。
引き過ぎず、引き足りなさ過ぎず、いつも丁度良い矢束だけ引き納めること。
6.離れが一定していること。
いつも一定の大きさの、四箇所の大離れが良い。
7.狙いの高さが一定していること。
矢摺り籐を透かして一定の位置にあわせます。矢摺り籐に印を付けるのは違反ですが、いつも同じ位置に来るように記憶し、弦道で覚えること。
すなわち目をつぶって引き分けても、会に入ったら正確に狙いが付いているようになりたいものです。
2-10 弓の扱いの枝葉末節
弓の扱いにおける枝葉末節について、どうでもいいことながら、自分では気になることを少し書いてみましょう。
弓では形が先ず気になります。まずは張りの高さです。これは常に一定の高さでなくては弓の強さが変わってしまいます。物差しで14cmとか15cmと決めている人が多いですが、私は親指を立てて手を握って計ります。狂っていれば上弦の輪を作り直します。
張りの高さが高すぎると、引き分ける距離が短くなり、関板が離れすぎて弦音がでなくなるので、鈍い感じになります。 また低すぎると、離れで弦が緩んで波打つので、手を打ったり、弓がひっくり返ったり、矢飛びが悪くなります。
弓の形はいつも元筈を持って胴のくびれを見ます。グラマーか、胸が出すぎか、尻が出すぎかを見て矯正します。胸と尻が弦と平行になるようにします。また、入木か出木か、特に関板のところ、筈の当たり所を見ます。入木が不足していれば、弓を押して矯正します。
弦は弓の中央を通っていてはいけません。矢を右に番える関係から、弦は弓の右の縁に沿っていなければいけません。これを入木といいます。この入木が過ぎても足りなくてもいけないので、手入れで抑えたりして矯正する必要があります。
それでなかなか直らない時は、弦の輪を少しずらして偏芯させます。それでも直らない頑固な出木では上弦の輪を裏向きにして掛けます。
また何回直しても滑って出木に戻ってしまう場合は関板のうら筈の付け根の左側が凹んでしまっていることがよくあります。この場合はうら筈の右側を少し削って弦がやや右よりになるようにするのが良いでしょう。
弦の上の方がすぐにぼさぼさになってしまうような場合には、関板の下側が鋭角な段差になっていることがあります。このような場合にはこの段差の角を削って滑らかにしてやると弦が傷まずに長持ちします。
私は、高さの狙いを正確にするのが下手くそであるので、矢摺り籐は普通の平籐で6cmの規定ギリギリが好みです。最近の弓はほとんどが、杉成りの飾り籐であり、細く長い籐が巻いてありますので、非常に狙いにくくなっています。
私はこのような場合には、6cm以上の籐の部分は規定に違反しない範囲で、ちょん切ることにしています。こうすると狙いがずいぶん楽になります。
握り皮は自分の手の幅、感触に合うように気になります。太さ、形、皮の質、すべり具合、柔らかさなどを調整するため、巻直しをします。昔ははがきの紙を折って調整しました。最近はゴム製のものがありますが好みによって削ったり足したりが必要です。
弓の形を矯正する方法に「むらとり」があります。これは専門の「むら師」と言う職人があり、相当な訓練と技術があります。私は昔自分の弓を矯正しようとして、洋バサミの刃でむらけずりをやったことがあります。このとき始めは案外簡単に調整ができたのに、調子に乗りすぎて行過ぎてしまい、結局弓を一本パーにしてしまいました。
皆さんくれぐれもこんなことをしないように。
弓の形を踏んで矯正するときは、ひっくり返らないように慎重にするように、弓を右手で左に押す場合には同時に左手で弦をはさむようにするとひっくり返る心配がありません。
また足で弓の胴を踏んで、手で持ち上げるような矯正をするとき、外竹をいためやすいので優しく扱いましょう。
2-11 上肩妻肩を地紙に重ねよ
会社に向かう満員電車のなかで、いつものように弓道四方山話のネタを空想していたら、「上肩妻肩を地紙に重ねよ」 と言う古い口伝が突然浮かんできました。
この口伝は本多流のホームページに本多利実翁が解説していますが、なんとなくしっくりこない、「弓道の新研究」に石岡先生が、3重十文字の胴造りは磐石不動の衝立のような堅板のようにと書いているがこれもしっくりこないな、と思っていたら、突然ひらめきました。
地紙というのは、足踏みを扇の曲尺で開く時、扇の紙の部分が足踏みの軌跡であること。これが地紙なんだなと。 丁度その上に左右の肩、押手の肩、勝手の肩をきちっと重ねなさいと言う単純な口伝であると判ったのです。
つり革から手を放し、足踏みの上に両肩が均等にくるようにして、ひかがみを軽くはって、お尻を少し持ち上げれば、電車が揺れても安定していました。
これが三重十文字だなと実感できました。
でも回りの人は変な奴だなと思ったかも知れませんね。
2-12 続・狙いについて
狙いについてはこれまでいろいろ書いてきましたが、遠的のように遠い場合、あるいは巻き藁のように近い場合の狙いについて書いてみましょう。
地の巻の「和弓では自分で狙いが判らない」では、矢筋と目線との三角形が的から眼までの距離、と的から弓までの距離との比例関係にあると書きました。
右目の目じりと頬付けの矢の中心との間は35mmとし、弓から眼までの距離を0.6mとするとき、近的では27.4/28.0をかけて、34mmとなり弓の幅の26mm+籐の厚み2×2mm+矢の半分4mmと一致するので、弓の左端に的が透かして半月となりこれが標準の狙いです。
もちろん顔の大きい人、小さい人、面向けによってこの35mmが大きく変化します。
これが遠的になると、59.4/60を掛けて35mmとなるので、近的より1mm分(的の4分の1程度)狙いが変化します。したがって近的と同じ半月の狙いとすると後ろ枠を狙うことになるので、半月と満月との中間(前四分の一)にする必要があります。
一方巻き藁では半割にするとき、矢が前に刺さると思いませんか。2mの距離で巻き藁を引く場合35.0×1.4/2.0=24.5mmとなります。したがって、巻藁では半月で狙うと矢は前に飛びます。したがって、狙いは半割ではなく完全な闇夜になり、ほぼ弓の中央付近となります。
以上が遠的をやりながら考えたことです。
2-13 空中に浮んでいる矢を真っ直ぐに飛ばすこと
弓道の力学的な作用を突き詰めてゆく時、人間の所作と、弓の運動と、矢の運動の3つに分解することができます。今日はこのうちの矢の運動について述べて見ましょう。
会の状態における理想的な矢の状態は、「的心に向かって空中に浮かんでいる状態」と考えることができます。もちろん重力があるので、「矢は押手の親指の上に乗り、矢筈では弦に嵌って(はまって)摩擦で支えられているだけで、それ以外の力を受けないのが理想である」といえます。
このような状態をもっと機械的に行なうように発明されたものが洋弓のボウガン(いしゆみ)です。これは洋弓の弓に直角な台木を取り付け、そこに弦を掛ける装置(掛け金)と引き金を取り付け、弓を水平にして使用するものです。
これは弓の力が全て掛け金に掛かり内部で釣り合っているので、射手には弓の力が作用せず、引き金を引くだけで正確に矢を飛ばすことができる武器です。(スポーツではない)
弓道の場合も、矢の運動だけを取り出せばこれと全く同じであり、この空中に浮かんでいる矢に対して、弦枕の掛け金を引き金を引くように外して、弦が筈の溝を真っ直ぐに押し出すようにできれば、矢は真っ直ぐに飛んでゆくはずであす。
この矢筋方向をX軸と定義する時、左右の力の方向と離れの方向がこのX軸線上に重なっていなければなりません。これが矢筋方向の働きであり、矢をしならせる嚢撓い(のじない)を起こさぬように注意が必要です。
ただし、この状態のままでは一寸したことで、矢口があき、筈こぼれ、弦外れがおきる恐れがあるので、安全装置として若干の押さえ込み、捻りが必要ですが、これはなるべく少ない方が望ましいです。これを半捻半搦(はんねんはんじゃく)、あるいは絞り込みの味と言います。
2-14 矢の筈を弦が押し出すこと
離れた後の瞬間に、弦が懸けの弦枕から分離すると、弓の反力が解放されて、弦が戻り矢筈を押し出して、矢が飛び出してゆきます。これは弓の運動です。
このとき弓に真っ直ぐな力を加えただけの状態から、解放すると、矢は右上45度の方向にはずれて飛んでゆくことでしょう。
このことは、日本弓の性質であり、故石岡久夫範士の「弓道の新研究」に詳細に分析されており、この「弓道四方山話」でも最初の頃に「弓の薀蓄」として書きましたので、今回は簡単に述べます。地の巻の「弓の薀蓄」、「偏芯モーメント」、石火の巻の「矢は右に飛ぶようになっている」を参照してください。
すなわち、矢が真っ直ぐ的心方向を向いていて、真っ直ぐに離れが出ていても、弓を真っ直ぐに押し引きする力(中心軸X軸方向)だけでは、右上45度方向に飛んでしまいます。
これは和弓では、矢を弓の右に番えるために弦が中央に戻ろうとして左右がアンバランスとなって、矢を右に押し出してしまうためです。
弓の形の良否もこの矢飛びに影響をあたえます。入木(いりき)の弓は弦が弓の右側に来るように調節してつくってありますので、若干は偏芯が小さくなりますが、いぜんとして角見射法は必要と言えます。
また、和弓は下側が短く、上側が長いので、下側の剛性が上側よりも強くなりアンバランスとなり、離れで下側が早く返り、斜め上方向に力が作用することになります。したがって押手はやや下に押さえ込む働きが必要となります。
したがって、矢が右上にスライスする分だけ、角見と、上押し(適度な上押しを中押しと言う)の働きで押さえ込む射法(コントロール技法)が必要となりますが、これは射手の所作であるので、また次の機会に述べましょう。
2-15 矢筋方向に飛ばす射法
会において頬付けの位置で、的心方向に向かって、空中に浮かんでいる矢は、矢筋方向に真っ直ぐに飛ばすことができれば、正しく的中するはずです。これは当たり前のことです。
しかし、矢を真っ直ぐに向けていても、弓を素直に真っ直ぐに押し開くだけでは、弓の偏芯によって右上45度方向に飛んでしまうことは、弓の運動として前回書きました。
そして、矢を真っ直ぐに飛ばす方法が射法の基本であり、弓道教本で教える弓道の規矩(きく)曲尺(かね)です。これは最も単純にみれば、押手の角見の働きと妻手の肘の働きであり、これらが弓、および骨格の偏芯モーメントに釣り合って、矢筋方向に割れて離れるものです。
即ち、押手手の内の働きに釣り合う妻手の懸けの働き、押手の肩根の働きに釣り合う妻手肩根の働きの4箇所の力を、中央の胸の中筋、背面の肩甲骨に集めて納めた状態が5部の詰めです。そしてこれを緩やかに伸びながら腹から断ち割った結果が、4箇所同時に離れる「四部の離れ」です。このとき両腕が左右に開くとき両拳は矢筋方向に伸び、両手の親指も矢筋方向に飛んでゆくはずです。
これらは私のいつもの口癖でした。
2-16 弓道における相反性
弓道の修行の簡単そうで、なかなか難しい点として、相反性があげられます。これは、射法訓の前文でも触れているように、弓道の修行は動揺して止まない心と体で行う所作であり、いろいろな要素が微妙に絡み合って変化するので、簡単そうにみえてもなかなか一筋縄では獲得できないように思います。
故白石先生は詳説「弓道」の72頁「会 2 力と仕事」において、言葉や指導の表現での誤解や錯覚も指摘されています。それは「力を働かせる」ことと「動作をする」ことは意味が違うので、誤解しないようにと力学的に説明し注意しています。物理学では力というのは 力=質量×加速度 であり、動作をする(仕事)というのは 仕事=力×距離 となります。したがって動作を伴わないで力だけを作用させること(静止の状態)があり、この違いをよく理解しないと間違った方向へいってしまいます。
以下は私の考えですが、たとえば、指導書や伝書などに「〜のように」、「〜のごとく」、「〜の味」、「〜の働き」と表現している一部分をそのまま鵜呑みにして練習すると、かえって間違った方向に行ってしまうことがあるので、注意する必要があるのです。
これらのイメージとか味わいというものは、言い換えればメインの料理ではなく、調味料のようなものと考えています。調味料には甘い、塩辛い、酸っぱい、ピリッと辛いものなどがあり、これが効くからといって一つを無闇に多用するのはだめであり、バランスを考えて適度に用いるのがよいのです。
具体的には以下のような点があげられます。
■押手の捻りや角見を働かそうとして、大三や引き分けで手の内を捻り入れると、入りすぎた押手になり、かえって効かなくなってしまいます。また大三でしっかり捻っているのに、引き分けで手の内が滑って効かなくなってしまいます。これは手の内を捻る方向に働かせるのであって、実際に捻り入れてはいけないのです。
■手の内を強くしようとして三本の指を強く握り込んでしまうと、とくに手の小さい人は手の平が密着して、べた押し、下押しとなってしまいます。離れの瞬間に密着した押してはしがんだ押してであり、弓の下側がはねて暴れて弓が返りません。握り込みが強すぎると、離れで弓の回転にブレーキがかかり、角見が効かなくなります。
■これとは逆に、弓は卵を握るように柔らかくしなさいといいますが、離れで緩めてはいけません、卵(弓)を取り落とさないようにがっちりと握る必要があります。武士が戦闘中に弓を落としたら命がありません。
■押手の離れを強くしようとしてスナップを効かせると乱れることがあります。これも働きの方向であって、むやみに手首でこねたり、弓手を振り込んだりすると、かえって効かなくなり乱れます。
■弓手の肩を働かせようとして大三で左肩を入れるとき、左ばかりを考えると、押手、左腕、両肩までが一直線になってしまうことがあります。この場合、両肩の線と矢筋は押手を頂点とする三角形になってしまいますので、平行ではなく、右に捻れ、3重十文字が狂うことになります。したがって右肩が逃げて右肩が収まらなくなります。
■これとは反対に馬手肘を関節にはめこもうとして、右ばかりを考えると今度は逆に右肩で背負うような形となり、片釣り合いであり、これも3重十文字の狂いとなります。この場合には左肩が凹みすぎて、小さい射となります。
■押手の肘の絞り(右回転)、馬手の懸けの捻り(左回転)を強くしようとしてやりすぎると矢が撓って、矢色がでて乱れることがあります。これも無闇に強く働かせるのではなく、半捻半弱の味わいで、程よく働かせるのがよいのです。
■矢こぼれをしないように懸けをしっかり深くかけると、かえって馬手の指が触って、矢こぼれ、嚢撓い(のじない)が起きやすくなります。
■離れを軽く出そうとして力を抜くと、もたれになったり、緩みが出たりして、乱れてしまいます。
以上のように、ただ一方の働きだけを考えて進めてはいけないということです。弓道は天秤のようなもので、常に左右のバランスを考えて中央でなければならないのです。
ただし、その時点でどちらかに狂ったバランスの状態にあれば、その反対の働きがないと中央にはなりません。癖を矯正するときは自分がどの位置にいて、何処が中央か見つけなければいけませんが、それは自分が信頼できる先生に診てもらえば客観的に診断して頂けるでしょう。これを診療の冷熱ともうします。
2-17 続・高さの狙い
高さの狙い、および左右の狙いについては地の巻にいろいろ書きましたので、重複してしまうかもしれませんが、ここでは狙いの物理的現象と視覚的現象(的付けの高さ)、射技問題について改めて書いてみます。
1)物理的現象
矢飛びの高さについての物理的現象は、矢は重力の影響を受けて、野球のボールやゴルフボールと同じように放物線(アーチ形)を描いて飛びます。これは遠的を行うと良く判ります。
的が矢筋の高さ(頬付けの高さ)と一致していれば、矢は水平線に対してアーチクラウンの高さ(ライズ)の2倍の高さの接線角で必ず上向きに発射することになります。
実際には、的は地面から30cm程度の高さにありますので、頬付けの高さとは身長にもよりますが1.2m程度の高低差が生じます。これを直線に結んだときの中央のライズはその1/4の0.3m程度となります。
たとえば、20キロ程度の弓で28mの近的を行う射手は、ちょうど水平かやや下向きとなるときに的中しています。これはこの1.2m程度の高低差によって水平の矢乗りのとき、的が水平の高さにあるとして変換すると、中央で0.3mの山なりになるのと同じであると解釈できます。このときの接線角(矢の角度)は 0.3×2/14m=0.04 となり、1mで4cm程度の勾配に相当します。
同じ人が60mの遠的を行う場合にはライズは距離の2乗に比例するので、0.3×(60/28)2=1.4m となります。放物線の接線角は2倍となりますので、高さの矢乗り角度は 1.4×2/30=0.09 となり、1mで9cmの勾配に相当することになります。
矢の初速は弓の強度(バネ常数)、矢束に比例し、矢の重量に反比例するので、これによっても狙いの高さは異なってきます。
2)高さの狙いの視覚的現象
高さの狙い(矢摺り籐に写る像)は直線の幾何的要素とアーチライズの要素との和となります。直線関係では矢摺り籐に写る位置は眼と頬付けとの高さの差(顔の長さにもよりますが、口割では約7cm)とほぼ一致するはずです。したがって頬付けの高さは狙いに敏感に影響します。さらに厳密にみれば、この寸法は眼から的までの距離(28.0m)と弓から的までの距離(27.5m)との比例となるので、近的では殆ど影響しませんが、巻き藁のように近い時には変化します。
山なりのライズの影響は、上述のように的の高さを水平とする時のアーチライズの接線勾配による高さが、矢摺り籐に写る寸法です。頬付け(眼)から弓までの長さを50cmとすれば、50cm分の高さを直線関係の寸法(7cm)から差し引くことで決まると考えられます。
したがって弓が無限に強ければ近的での高さの狙いは、握りの位置から7cmとなり、20キロ程度の弓であれば 7−4×50/100=5cm 、10キロの弓では 7−8×50/100=3cm となります。
同じ人が同じ矢を使用して60mの遠的を行う場合の的付けは、7−9×50/100=2cm となり、10キロの弓ならば 7−18
x 50/100=−2.0 cm となり手の中に隠れますが、もちろん軽い遠的用の矢を使用すれば的付けは少し高くなります。これらの計算値は実際に行っている的付けとほぼ一致しています。
道場の床と的の高さとの高低差については、極端にこれが違わない範囲(十文字が形成できる)であれば、的と弓と眼との視覚的関係は相対的に変わらないので、矢摺り籐に写る的付けは全く変化しないはずです。このことは立射の場合とつくばい(割膝)の場合で高さの差が60cm程低くなっても高さの狙いが変化しないことで、証明されます。
3)射技の問題
以上の議論は全て標準的な射法、射技で行った場合のことであり、これが狂うと矢の高さは狂ってきます。
- 矢番えの位置が上下に狂っている場合
- 押手が極度に上押し、下押しの場合
- 懸けの親指の不正、捻り過ぎ、嚢撓いがあるとき
- 胴造りの不正。かかる胴と退く胴(遠的では退き胴が飛ぶ)
- 物見がかかる場合と退く場合(顎が俯く、上がる)
これらはいずれも言わずと知れた5重十文字の狂いであり、矢飛びの高さが狂います、この他にも以下の悪癖が狂いとなります。
- 会の五つの緩み(両手の緩み、両肩の緩み、胸の緩み)
- 六凶の離れ(前離れ、送る、戻る、寄る、上がる、下がる)
- 三病(早気、もたれ、緩み)
以上高さの的付けについていろいろ書きましたが、実際には繰り返して練習すれば、自然に定まってくることですので、あまり意識する必要はないでしょう。
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