2-16 弓道における相反性

2006/05/28 日 00:00
櫻井 孝



故白石先生は詳説「弓道」の72頁「会 2 力と仕事」において、言葉や指導の表現での誤解や錯覚も指摘されています。それは「力を働かせる」ことと「動作をする」ことは意味が違うので、誤解しないようにと力学的に説明し注意しています。物理学では力というのは 力=質量×加速度 であり、動作をする(仕事)というのは 仕事=力×距離 となります。したがって動作を伴わないで力だけを作用させること(静止の状態)があり、この違いをよく理解しないと間違った方向へいってしまいます。

以下は私の考えですが、たとえば、指導書や伝書などに「〜のように」、「〜のごとく」、「〜の味」、「〜の働き」と表現している一部分をそのまま鵜呑みにして練習すると、かえって間違った方向に行ってしまうことがあるので、注意する必要があるのです。

これらのイメージとか味わいというものは、言い換えればメインの料理ではなく、調味料のようなものと考えています。調味料には甘い、塩辛い、酸っぱい、ピリッと辛いものなどがあり、これが効くからといって一つを無闇に多用するのはだめであり、バランスを考えて適度に用いるのがよいのです。

具体的には以下のような点があげられます。

■ 押手の捻りや角見を働かそうとして、大三や引き分けで手の内を捻り入れると、入りすぎた押手になり、かえって効かなくなってしまいます。また大三でしっかり捻っているのに、引き分けで手の内が滑って効かなくなってしまいます。これは手の内を捻る方向に働かせるのであって、実際に捻り入れてはいけないのです。

■手の内を強くしようとして三本の指を強く握り込んでしまうと、とくに手の小さい人は手の平が密着して、べた押し、下押しとなってしまいます。離れの瞬間に密着した押してはしがんだ押してであり、弓の下側がはねて暴れて弓が返りません。握り込みが強すぎると、離れで弓の回転にブレーキがかかり、角見が効かなくなります。

■これとは逆に、弓は卵を握るように柔らかくしなさいといいますが、離れで緩めてはいけません、卵(弓)を取り落とさないようにがっちりと握る必要があります。武士が戦闘中に弓を落としたら命がありません。

■押手の離れを強くしようとしてスナップを効かせると乱れることがあります。これも働きの方向であって、むやみに手首でこねたり、弓手を振り込んだりすると、かえって効かなくなり乱れます。

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