12-23 弓に関する神話〜竹林流伝書「灌頂の巻」から

2022/10/21 金 18:00
櫻井 孝



伝書とは師匠(道統)が弟子の修行の段階に応じて、この書を書き写し、巻末に日付と代々の師弟の名前を書き連ね伝える認許の巻物です。

第一巻〜第四巻は初勘之巻、歌智射之巻、中央之巻、父母之巻と云い、これを「四巻之書」という外伝であり、第五巻は「灌頂之巻」という内伝(秘伝書)であり、併せて「五巻之書」と云います。

1.神話のイントロ
つらつら、弓の由来を尋ねるに天地(あめつち)の開始(はじまり)、日月の出生し給ひてより、月は水神(みずのかみ)の精なり、日は火神(ひのかみ)の精なり。この二神(ふたはしら)自然と和合して星生ぜり、これによって明星(みょうじょう)と云うなり。
<略>
三光(さんこう=日月星)あらわれてより、色々様々のこと生じ、草木出生すれども、魔王(まおう)天より下りて、皆とりくじき、土沸き水降りて泥界(でいかい)となりて、万物育つことなし。
その時、帝釈 天(天界)より下り給いて、須弥山(しゅみせん)の頂きにてご覧ずるに、日月和合して、星の如き光ありて長きなる物生まれたり。帝釈御覧ずれば一方は烏(からす)の嘴(くちばし)、一方は兎の頭の如くなるに、弦を加えて見たり。帝釈に向かいそぞろに声してものを云いける、「我は弓と云う物ぞ、星の精にてあるぞ、世を守り生類を助けんために弓と云う物に形を変じて生まれたるぞ、我を能く信じてあがめ給えよ、世界の守りとなるべし」と云いたりける。
帝釈奇特に思し召して、枯れたる芦の有りけるに弦を押さえて相構えて、世界の守となれ、あがむべしと宣(のたま)いて、弦を少し打ち給えば、芦は弦に跳ねられて、帝釈のおざす梵天へ上がりて、芦の末(うら)の方に生き物の貌生まれて、これが言葉を云いけるに、「我は星の精なり(小略)形を変じて箆(の:矢)と云う物に生まれ変わりたり、すなわち弓の部類なり、あがめ給え」と云いける。この矢の言葉を云いたるものは頭虫(とうちゅう)の形にある間(似ているので)、矢の頭(筈)を箆けら(おけら)の首と名付けたり。

灌頂の巻の「神話」の記述は荒唐無稽なものですが、古事記の書き出しと似ていて、少し懐かしいおとぎ話です。

世界が天変地変によって泥界となっているのを帝釈天が見ていたところは須弥山の頂きでした。古事記なら高天原ですが、そこは仏教での最高峰の神聖な山です。

▼須弥山とは

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