1-13 位なりの位とは
2003/02/17 月 00:00
櫻井 孝
この他に伝書には「莚布絹綾錦の五つ」、「五輪砕きの五位」、「十二字五位」など五つの位に拘った言葉が有り、位とは「段階、品格、練達度」を示す言葉であることは間違いないと思われるが、一寸意味が通じにくい点もあります。
「莚」は織物の基本であり、縦縄に横縄を織り込みますが、凸凹が大きく荒いものであり、初心者の段階を云います。布になるときちっと織り込まれ、着物にもできるようになりますが、ザラットしたもので中級程度でしょう。そして絹の段階、綾の段階、さらに錦の段階になると、きめ細やかで、上質で、至極の織物であり、射では錬士、教士、範士のように練達の段階を示し、上記のように弓道修練の5段階の位をさすものと解釈できます。
ただし「絹綾錦の三位」ともあるので、ランクの低い莚、布は位とは云わないのかもしれません。
五輪砕きについては、上述のように修行の練達度の五段階を意味する場合と、天の巻の「五行陰陽道」に書いたように、一つの行射の中での五段階を五身(弓道八節に相当)に当てはめて説明する場合の2種類の意味があります。
この五身の第一は「土体黄色中四角」の位であり、「目中て」と呼ばれ弓道八節の「足踏み、弓構え、胴造り」のことを言います。この段階は「大地を踏みしめて、体の中央に心をおき、真四角にゆがみのないように」と言う解説があり、射技の基礎を意味しますが、決して初心者という意味にはならないはずです。そして、その第五が「金体白色西半月」であり、「見込み=残身」を説明するとともに、射品射格が練達の域を示す言葉として解説されています。
しかし、「西半月--」が最高位の練達度であるとすると、練達の士が足踏み、弓構え、道造りをするときは、何の位ですかとなり、矛盾となります。
十二字五位とは「父母、君臣、師弟、鉄石、晴嵐老木」の十二文字で、5段階を云います。第一は「父母等しければ、子の成人急なり」であり、「父母は左右、子は矢なり」と補足説明があります。また弓道教歌に「剛は父、繋(かけ)は母なり、矢は子なり、片思いして矢は育つまじ」とあり、左右均等に引き分けないと矢が真っ直ぐに飛ばないよと、艶めかしい言葉で教えています。
第二では「君臣直なれば、国ゆたかなり」であり、「君臣は父母と同じ、国はまた子なり」と同じ意味であることを補足説明しています。これは安土桃山時代の教歌ですから、「良い君主に良い家臣が信頼して力を合わせれば、国は栄えるように、強い押手にふさわしい馬手が釣り合えば、良い射が生まれる」と私流に解釈します。
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