9-14 伸びが射に与えるもの

2018/12/26 水 18:00
櫻井 孝


「楔」は建築物や鳥居などにおいて、隙間に詰めて固定する木製の三角片であり、非常に良く締まるので、会の詰め合いに例えています。

「割り楔」は鉄製の三角片であり、大石の小さな割れ目に打ち込むとき、一瞬のうちに火花が飛んで大石が割れるので、「五部の詰め」で締まった胸の中筋に打ち込んで一瞬のうちに「四部の離れ」が割れて開くイメージです。

「轄」は大八車のような車輪の外れ止めとして、軸受けの穴に挿し込む鉄製のくさびであり、回転を妨げないで外れ止めを確実にするので、手の内・肩・肘の関節に用いるイメージです。

「軽妙な離れ」には「詰めの楔」で固めるよりも、「車止めの轄」の方が、力みなく伸び合って軽く開くので、イメージがしっくりします。

8.五部の詰めと五緩


1)五部の詰め
「五部の詰め」とは、弓手拳、馬手拳、弓手肩、馬手肩、胸の中筋の五か所について、五重十文字の規矩に従って、緩みなく張り合うことであり、単に「詰め合い」、あるいは骨法(骨相筋道)とも云います。射法訓において「胸の中筋に従い、宜しく左右に分かるる如く、これを離つべし」とあるように、胸の中筋(大石)に鉄楔(割り楔)を打ち込むように、一瞬火花が散って胸から割れて、弓手拳、弓手肩、馬手肩、馬手拳の四か所が同時に別れて「四部(しべ)の離れ」、あるいは「紫部の離れ」と云う至極の離れが出ます。

2)五緩
「五部の詰め」の逆に緩みが生じるものを「五緩」と云います。すなわち弓手、弓手肩、胸、馬手肩、馬手の五か所の緩みであり、容易ではない悪癖であるが、それぞれを伸ばすことによって治すことができます。

3)剛無理、一騎当千、大将とは
昔の弓術書に「剛無理 一騎当千 大将」という言葉があります。

剛は弓手のことと強いことの二重の意味であり、無理はわけもなく(理屈抜きに)の意味です。すなわち、「弓手は理屈抜きで強くあれ」と云います。

「馬手は一騎当千(一人で千人に匹敵する)のように強く」と云います。「胸は左右に何処までも強い弓手と一騎当千の豪傑を従えた大将の如く、どっしりと動かず、一閃の指令で左右同時の離れが出る」と解釈できます。

9.離れについて


1)至極の離れ
竹林流の弓術書には、離れについて「四部の離れ」「鸚鵡の離れ」「雨露利の離れ」の三つが至極の離れとして解説されています。

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