9-14 伸びが射に与えるもの

2018/12/26 水 18:00
櫻井 孝



また、昔の「弓術書」や「弓道読本」、「詳説弓道」など著名な弓道書籍には、骨格や筋肉の働きについて詳しく説明しているのはこのような考えからと思います。

4.伸びは力の増大曲線


1)押し引き一如
当たり前のことですが、弓と弦の関係は常に「押し引き一如」で釣り合っているので、引き分けて会に至るときも、体を保持できれば、必ず釣り合うはずです。

また、これも当たり前ですが、弓はバネ(弾性材)であるので、押し引きの力を抜けば(緩めば)縮み、力を入れれば(増加すれば)伸びますが、縦横十文字で中心が傾かなければこれも釣り合っているはずです。

2)射法訓の大三
射法訓では、弓手を三分の二、馬手を三分の一と書いているので、弓手を強く押そうとする人が多いですが、それは誤解であると思います。

大三へ移行する時、左に送るため、弓手は矢束の三分の二だけ押し開き、馬手を矢束の三分の一だけ引き開いて、中力を取るところが大三の構えです。

ここで、矢束90pで弓把が15pならば、大三での引き尺は 60-30+15=45pとなり、矢束の丁度半分となります。このときも、力の釣り合いは「作用・反作用の法則」により等しくなります。

3)離れの釣り合い
「離れ」においては、押し引きして釣り合っていた力が一瞬のうちに反力を失うので、縦横十文字狂っていると、バランスを失って乱れ易いのです。

射法・射技の基本体型で云う、「縦横十文字」、「五重十文字」が整って、「息合」、「心気の働き」が安定して、「左右に伸びる」とき、あたかも「張り詰めた糸が切れる」ように、あるいは「葉先に溜った露の球が膨らんでポトリと落ちる」ように、左右一直線に割れて開き、自然で軽妙な離れが出ます。こうなりたいと思います。

4)伸びは増大曲線
伸びはぐいぐいと矢束を引くことではなく、ほんの僅かな動きで手の内、肘、肩関節の詰まりを伸ばすとき、その位置のまま接線方向に離れます。このことから「離れには力の増大曲線が絶対条件」であります。

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