4-27 弓手の働きについて
2018/12/26 水 18:00
櫻井 孝
註:口伝(くでん、こうでん)とは微妙な点を書き記さず、口頭で伝えるものですが、伝言ゲームのように誤って伝えられたり、途絶えて残っていない場合が多いです。口伝書と云う書もありますが、一般には秘伝のため見られません。
2)「鸞(卵)中」(らんちゅう)
「鸞中 軽し」定、神、力の三指に口伝あり。
鸞とは大鷲の雛であり、卵の意味も秘しています。大鷲は羽根幅が2.5mもある最大の鷲で北海道に渡って来ます。その美しい羽根は絶滅危惧種のため、公式には使用できません。大鳥(おおとり)とも云います。
この手の内は、大鳥が雛(卵)を柔らかくかき抱くような気持ちで握るものです。しかしそれは決して弱く握るものではなく、大鷲の手はあくまでも強くガッチリとして、卵を落とすことなく、雛を締め過ぎることなく優しく握る手の内です。よく緩々にせよと云う人がいますが、鷲のように強い手で優しく握ることが肝心です。
3)「骨法陸」(こっぽうろく)
「骨法陸」とは弓に直角な手の内、すなわち「五重十文字」の三番目。
竹林派では「中四角の手の内」と云い、一般には「三隅の手の内」とも云います。これは弓手の天文筋の上下を弓の左側の外竹に押し当て、親指の腹を下げて握り革に沿わせ、小指を近づけ、薬指、中指を詰めて揃えて整え、人差し指と中指の又(虎口)で弓に直角に押す標準的な手の内です。
4)「三毒」(さんどく)
「三毒」とは弓に直角に手の内を整えるとき、親指は「瞋恚(しんい)」に、小指は「貧欲」に、薬指は「愚痴愚痴」と働きかける手の内。
これは不動明王の怒りの親指であり、三指を揃えて貪欲に愚痴口と締めるものであり、強弓にも負けない強い手の内で「三毒強し」とも云います。
5)「嗚呼立ったり」(ああたったり)
「嗚呼立ったり」は赤ちゃんが握るような無心で素直な至極の手の内。
赤ちゃんの握る力は何気なく柔らかいながら、案外しっかりと強い自然な手の内です。幼子を持つ親がこれを見て、「ああ立った立った」と喜ぶことから名付けられました。これは簡単には会得できるものではなく、弓手を強く望み、あれこれと悩み試しつつ、長い修行の末に悟った達人が会得するものであり、「老いて再び乳飲み子に還る」とも云います。
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