1-27 骨法、あるいは骨相筋道について(其の三)〜自分の体を意のままに操ること〜

2018/02/06 火 19:13
櫻井 孝



1.総体の歪み


弓矢なしの場合には、背骨を真っ直ぐにして両腕を水平に伸ばして保つことは誰でも簡単にできますが、いざ的に向かって引くとき、なぜか体が歪んでしまいます。

五胴(係る・退く・伏す・反る・中の)では中胴が正しいのは常識ですが、負けまいと頑張って推し引きするとき、胴造りも三重十文字も縦横十文字も歪みます。しかし、これらの歪みを自分で認識できないので、どうしたら正直にできるかが難しいのです。

弓道教歌に「口伝せよ 押していたずら 引く無益 父母の心を 思いやるべし」とあります。弓手を突っ張って推し、馬手も負けまいと無暗に引っ張るとき、左肩が出て右肩が逃げ、縦横十文字が崩れて失敗します。引き分けは、弓手を押し馬手を引いて拡げるイメージがありますが、じつは両肘の間は共に押されて対称に働いています。だから「引き分け」と呼んで、左右の肩が片釣り合いとならないように(これを父母の釣り合いという)考えることが大事であると云う意味です。

2.手の内のゆがみ


弓手手の内は弦を引かないで握るとき、綺麗な中押しの手の内を作ることは容易です。しかし的に向かって引き分けるとき、手の内は潰れ、べた押し、入り過ぎなどの悪い形(弓手の十文字の歪み)となり、効きません。これは弓からの力を虎口で真っすぐに押すことができず、負けて潰れるため、あるいは弓を捻ろうとして握り潰すためです。

馬手手の内も、徒手あるいはゴム弓で行うとき、親指を水平に保ち丸く張りのある綺麗な形を作ることは難しくありません。しかし、的前で引くとき弦に引っ張られて、馬手はしがみ、手首や指先に力が入って、親指が斜めになって悪い形(馬手の十文字の歪み)になりやすいのです。

3.調子中りと悪癖


こうすれば良く中るとして、骨法を用いずに体を固め、矢が前に逸れるときは狙いを後ろに着け、ただ同じように繰り返す射は悪癖の射です。このようにしても中りは出るものですが、この中りは調子中りと云って一時的なものであり長くは続きません。

このような射は、片釣り合いとなり縦横十文字が歪み、日を経るごとにますます頑固な悪癖となります。これを直すには師匠の正しい指導が必要ですが、弟子は自分の骨の曲がっていることを知らないので、教えられると違和感があり力が弱くなった気がして中りも止まり、師の教えに背くときは一生涯治らないものとなります。

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