2-20 狙いと的中

2017/01/19 木 00:00
櫻井 孝



3.的に拘るなとは


近代の弓道では精神性を重視する風潮から、狙いに拘るのは卑しい射であり、正しい射法を身に付けることが肝心で、そうなれば狙いは意識しなくても自然に付いてくるという教えがあります。オイゲンヘリゲルの「弓と禅」に阿波研造先生が「的を狙うな」と云っています。しかし、そのような考えは合理的ではなく、狙いが不正では何が正しいかを見失い、遠回りすることになります。

初心者の方の多くが的のはるか後を狙っていることを知らないで、自分は正しく狙っていると勘違いしていることがあります。その結果、押し手を打ち、髪を払い、矢は矢摺り籐の右側を擦って、右に飛び出して行きます。矢の飛んでゆく方向から狙いを定めてはいけません。

矢が曲がって飛ぶ分だけ狂わせて狙うのは上達を拒否していることです。まして、後ろを狙っていることを知らないのはあまりにも無知と言うほかありません。

4.中野慶吉先生の教え


弓道教本第四巻に中野慶吉先生は「弓の狙いと矢乗り」について、以下のように書いています。

矢は常日頃より、必ず的心につくようにしていなければならない。
それには物見を正して、真の矢束を引き分け、頬付けを定め、胸弦がつくなどして整えた会で、しかるべき人に、後ろから矢が的心に付いた所を教えてもらい、良くその位置を弓を透かして確認して、正しい矢乗りを身に付けることである。矢が前に出るからと後に付け、後に行くからと前につけたりして的に当てるなどは、正直なことではない。
的心に矢をつけて前にそれるとしたら、一層に技や均衡を修練してゆくのが修行道なのである。
矢摺り籐を透かして、あるいは弓で的を半割して的を見るが、それは単に的を見るのではなく、その的心を目に映すという見方であれば、的に捕われない心眼となる。要するに心が澄めば、目も澄み、精神が統一されるのである。


image[図-4 後方から狙いを見て貰う]


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