12-20 手の内における指の呼び方

2014/04/15 火 09:01
櫻井 孝



流祖竹林坊如成が書いた「日置一篇の射」は二代目の石堂竹林貞次によって4巻編成に改編されて「四巻の書」となりました。しかし、如成の文章は極めて簡潔であったために解釈が難しいことと、切り貼りして編集したために繋がりにくくなった部分があり、貞次が丁寧な注釈を書き加え、さらに後の後継者が注釈を加え、代々書き写されて伝書となりました。したがって、同じ流派の伝書でありながら、その系列によって解釈の違いが生じたものです。

竹林流では弓手手の内の呼び方として、四巻の書の本文には記述されていませんが、両書とも「定恵善神力」とあり、一致しています。これは「親指は定める指、人差し指は恵む指、中指は善き程に締める指、薬指は神と拝む指、小指は力を込めるべき指」と解釈しています。

弓手の五箇の手の内において、「鵜の首の浮きたる、定、恵、善の三指に口伝あり」、「鸞中の軽し、定、神、力の三指に口伝あり」とあり、指使いはそのまま理解できます。

馬手手の内(三つ懸けの場合)の「恵休善力」について、星野勘左衛門は弓手の「定恵善神力」という言葉はもともと特定の指を示すものでなく、その働きを云うものであり、馬手においては弓手とは呼び方が異なると解釈し、「親指は恵む指、人差し指は休め、中指は善く締め、薬指・小指は力を入れよ」と注釈しています。

一方、紀州竹林系(尾州から紀州に仕えた瓦林与次右衛門成直、吉見台右衛門順正)の伝書(本多流の本書)では「恵休善力」について、弓手手内と同じ呼び方で「恵指(人差指)は休め、善指(中指)は力を入れよ」と極めて素直に解釈しています。

このように指の呼び方と働かせ方の解釈に違いはありますが、いずれも親指の帽子を中指で善き程に締め、人差指は中指に軽く添えて、薬指、小指は締めよとなり、具体的にはともに同じです。人差指で親指の帽子を押さえ締めるときは、矢に障りが出て離れが出にくくなります。また薬指、小指を締めれば、中指を柔らかく使えて、肘尻に力を伝えられます。

自分は尾州竹林流星野派の道統であった魚住文衛先生に教えを受けたものですが、この解釈については瓦林成直の解釈のほうがしっくりします。

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