手袋考4

2013/05/26 日 22:00
峯 茂康



私は歩射で諸ガケを使い始めた二十年あまり前に酷いモタレを発症しました。モタレはそれ以前からの持病ではありますが、このときは最悪でした。どうも駿河三慶で誂えた諸ガケの帽子が私には少し長すぎるようで落ち着かず、さらに弦枕がやや指先側にあったため、やんわり帽子を押さえていると暴発気味に弦が出て行くので怖じ気がついたようです。

私は握りしめたら緩めないと離せないからダメだと思いこんでいたので、モタレから脱するためとにかく指の力を抜こうともがいていました。しかし、そうすればするほど離れで腕全体が緩みそうになって慌ててしがむ。酷いときはビクになる。また引き戻す。の繰り返しでした。

この窮状を救ってくれたのが愛知歩射同門の先輩でした。

まず帽子をしっかり人差指・中指で押さえること。その上で、離れで帽子が起き上がるのは中の親指を反らす力によるのではなく、弦が帽子を押し退 けていく力によるのだと教わりました。それを体感するには(控堅めのあるユガケで)帽子から親指を抜いて、空の帽子を人差指・中指で押さえて取り懸けてみよとも教わりました。

このアドバイスであっさりと窮地を脱しました。実際には帽子から親指を全部抜き出して試すことはしませんでしたが、引取るに従って帽子が半抜けになるように心掛けると、人差指・中指の二指で弦を保持している感覚になります。

ここまで書くと、無争ガケの岡崎先生の考え方と似ていると思われるでしょう。

私は岡崎先生と電話で少しだけお話ししたことがあるのですが、そのときは岡崎理論にあまりピンときませんでした。しかし、もし帽子から親指を全部抜いてみれば云々という説明だったら、ひょっとすると腑に落ちて無争ガケを注文していたかもしれません。ただ、基本的に無争ガケは諸ガケと同じですと仰っていたことは記憶に残りました。

無争ガケも諸ガケも二の腰が柔らかくできていて親指の屈伸を妨げません。要するに無争ガケとは「帽子が、弦に負けて、パタンと軽く起きる」ことを追求して作られていて、その機能は諸ガケも同じということを岡崎先生は仰ったのでしょう。

また、無争ガケにはフックというオプション部品があります。これは帽子の後端(二の腰の手首側端)に小紐を通す乳で、「弦に帽子を任せて引き分けた時、帽子がスムーズに適当な分だけ、親指から抜け出せるように」する工夫とのことです。これは諸ガケで小紐を帽子にたすきがけにするのと同じです。

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