手袋考3

2013/05/26 日 21:58
峯 茂康



私は小笠原流で稽古を始めてから、現代弓道で常識とされていることは果たして普遍的射法なのかという疑問を強く抱くようになりました。古流の様々な流儀の折衷射法では術理に不整合があって当然だと思ったのです。

そこで、これまで染みついた悪癖ごと一旦白紙に戻して純粋な小笠原流の射法でやり直そうと一念発起しました。

しかし、私は小笠原流の射法とは何なのか知っているようで全く知りません。弓道教本には正面打起しで大三を止めずに引き分けるのが小笠原流であるという程度のことしか書いてありませんが、私の認識もそれと五十歩百歩です。

機会がある毎に同門の先輩にどうすれば当流の弓の引き方になるのかと訊ねましたがさっぱり分かりません。これはまだ私が未熟だから教えて貰えない、もしくは答えが示されているのに理解できないのでしょう。

的前の射は平和な世の中になってから随分変化してしまっています。純粋な古流を学ぼうとするなら少しでも故実に近い射技を稽古するより他ありません。日置流なら指矢前(差矢前)でしょうか。小笠原流なら騎射です。騎射の稽古をすることで小笠原流の射法とは、流儀を貫く術理とは何かという手がかりが得られるのではないか。こう考えて私は遅ればせながら騎射の稽古を始めました。

まず、騎射で堅帽子のない手袋を使うようになってからは意識に大きな変化がありました。和弓では堅帽子を使うことが当たり前だという先入観から開放されたのです。そもそも35年前に初めて弓を引いた中学一年生のときは親指一本のチョンガケでしたから、その時点まで戻って射技をリセットしたようなものです。そこで歩射でも手袋で稽古してみることにしました。

ただ、弓道場で騎射手袋は目立ちます。そこで、堅帽子になる前の諸ガケはこんなものだったのではないかと勝手に想像して歩射用手袋を自作することにしました。

image[手袋6]

親指は内側から鹿革を貼り重ねてあるだけで堅めというほどではありません。この手袋の前にもう一つ試作していて、それで親指の腹側に革を貼るだけでは強い弓が引きづらいことが分かりました。弓力20キロくらいまでなら相当な矢数をかけても問題ないのですが、24〜25キロくらいになると親指の背も痛むのです。そのためこの手袋では親指の背も腹もすっぽり内側から革を貼り込んでいます。背側は革を一 枚余分に当てただけですが、これでかなり効果があります。これを使って精一杯の弓力で引いてみたら色々得るところがありました。

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