鞍の修理
2011/02/15 火 19:08
峯 茂康
騎射の行事は春と秋に集中します。一般に奉納行事は神社の例祭に執行されることが多いことからそうなるのでしょう。
私達は行事を「場所」と呼びます。個々の行事だけでなくシーズンも春は春場所、秋は秋場所と呼びます。
例年秋場所の最後を締めくくるのが多度大社の流鏑馬まつりです。無事にこの場所を終えると大層ホッとします。
しかし、ここでちょっと一休みなどと怠け心を出そうものなら「冬場にどれだけ稽古を積むかが上達を左右する」と兄弟子から戒められます。有り難いことです。
さて、場所の合間にはもう一つやらねばならぬことがあります。
それは道具の手入れです。
騎射の道具は大変損耗します。稽古や場所の度に何かが破損すると言っても過言ではありません。
弓矢や手袋(騎射ガケ)は日常的に修理を繰り返しますが、馬具のような大物はなかなかそういうわけには参りません。
私には一つ気がかりな鞍があって、いつか修理せねばと思っていました。それを今回着手しました。
道具全般の修理について私は三重の先輩に手ほどきを受けました。この方は宗家の著書「弓と礼の心」にも登場しますが、本職は外科のお医者さんです。院長先生のキャビネットには患者さんのレントゲン写真よりも鞍のレントゲン写真の方が沢山入っているそうです。
革製の洋鞍と違って和鞍は木製です。表面には漆を塗ってあります。そのため木部の細かいひび割れや虫食いなどはレントゲンでなければ調べようがないのです。
現在は和鞍を作る職人さんがいなくなってしまいましたし、鞍に適した木材の入手も非常に困難です。つまり新品の和鞍は今後供給されることはまずありません。従って射手自身が古い道具を大切に修理しながら使うより他ありません。
この三重の先輩は矢も手袋も、そして鞍まで自分で作ってしまわれます。私もなんとか矢と手袋は自作できるようになりましたが、これまで鞍には手を出したことがありませんでした。
[7] beginning... [9] >>
comments (0)
-
<< 1-24 「四巻の書」序文 円覚経について
11-17 竹林坊、日置流の故郷探訪 >>
[0] [top]