7-27 遠的射法について

2008/09/09 火 08:24
櫻井 孝



遠的になると弓の強度にもよりますが、矢先を高く上に向けなければ届かないのは当然であり、矢法(やのり:矢の角度)が斜めになって縦横十文字の形成が難しくなるので、胴造りなどの射法の基本から疑問が生じて狂ってしまいます。

私は遠的の注意点として「遠的の直後に近的を行うときに狂わないようにできるか」を考えています。これは「遠的も近的も同じようにできるか」であり、「どのようにしたら遠的も基本を崩さないで普段と同じように行射できるか」にあります。

古書には胴造りに「懸かる胴」、「退き胴」、「伏す胴」、「照る胴」、「中の胴」の五胴があり、的前(近的)には偏らない中の胴を用いるが、高い的、遠い的を射るには退き胴(のきどう)を用いると書かれています。

この「退き胴」は、股関節から腰を「くの字」に折って(腰を切る)、上半身全体を傾斜させる胴造りであす。こうすれば、矢法が上向く分だけ背骨・頚椎をそのまま後ろに傾斜させることができ、直交を保ったまま五重十文字を崩さずに行射できます。

引き分けの要領として三つの方法が行われているので、勝手な意見を述べてみます。

1)狙い(的付け)だけを高くする方法

近的と同じ射法のまま狙いだけを高くする方法です。非常に強い弓(例えば25キロ以上)の場合には矢法がそれほど高くならないので、同様に違和感なく行射ができます。

しかし、弓がそれほど強くなければ、矢の傾斜が大きくなり十文字の形成が難しくなります。

すなわち、体の縦軸が鉛直のまま、両肩は水平のままで、矢を傾斜させるのは普段の行射とは違和感が大きくなり、押手の方向、手の内、妻手肘の収まり具合が狂い、物見、口割りも怪しく、離れの方向も狂い易くなり、さらには近的射法にも狂いが影響します。

2)会で腰を切る方法

近的と同じ射法のまま会まで引き分けた後、股関節で腰を切って上半身をそのまま「退き胴」として収めなおし、的付けを確認し、詰め合い、伸び合いを行って離れに至るものです。

これは縦横十文字を保っているので狂いは少ないはずですが、会に入った状態のままで上半身全体を大きく傾斜させるのはなかなか難しいです。会に一旦収めた後に腰を切って、遠的用の会に収め直すことは、よほど力と気持ちに余裕がないとできません。その結果、保てなくなり、詰め合い・伸び合いができず、離れも萎縮して苦しい射法と言えます。

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