10-11 早気の克服
2006/12/29 金 18:01
櫻井 孝
(中略)
また私の友人は早気を治すため、巻き藁に自分のシャツを掛けて引いたら、穴を明けてしまいました。早気は精神的なものが大きく、条件反射的に出てしまうのでなかなか直らないのです。気持ちを入れ替えて、少し覚めた目で、澄んだ心で心身をコントロールできるようにすることができれば(難しいです)克服できたといえるでしょう。
昔の達人でも早気に悩んでいたことを読んだ記憶(正確ではない)があります。ある人が早気を治そうと一大決心して、殿様から拝領した家宝の羽織(自分のシャツどころではない)を的に懸けて射たところ離してしまい治らなかったので落胆し、今度はかわいい我が子を立たせたらようやく早気を克服できたと書いてありました。
また、星野勘左衛門の記録を破った和佐大八郎が早気になり、練習でも矢が通らなくなって(堂射は速射であるが早気では矢が伸びない)悩んでいたとき、師匠の吉見順正が大八郎の矢前に突然身を呈して制止したので、ようやく早気が治ったとありました。
こんな事を書くともう早気は治らない思うかも知れませんが、諦めてはいけません。
3. 会の抱えと心の動揺
会に至って力みなく無意識のうちにポロッと自然に離れるのはオイゲンへリゲルでなくとも陶酔するような素晴らしさがあります。しかしこの無意識が曲者です。これが病的になってくると、ある刺激を受けると会の充実や詰め合いが整わなくても制御不能となり、条件反射的に離れるようになってしまいます。これが本格的な早気です。
弓道四方山話では8-13「心の動揺」5-18「会―抱え」1-18と21「心の騒静は七情を去って寝々子法師に至れ」7-9「詰め合い伸びあい」に書きました。
引き分けまで整っていい形に収めてきても、離れの一瞬に早気、緩み、ビクリなどの患いが生じることがあります。これは殆ど中てようと思う気持ちが先立って離れを急ぎすぎて、道に達しないためです。射も意識も乗ってきて、狙いが着いたとき、「よしこれで放して勝利を得よう」と心を動かしてしまうためです。
4. 克服方法
前にも述べたように、早気を治す薬も指導もありません。自分で制御しなければならないのです。早気を直すために力を抜いたり、意識を逸らしたり、狙いを外したり、頬付けを浮かしたりなど、ただ保つだけの射で早気を治そうとすると、今度はもっと厄介な緩み・ビクリという病魔に取り付かれます。そうなると早気でしかも緩み射となり最悪の状態になってしまいます。
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